滝井椎野

かがみの孤城の滝井椎野のレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
4.1
直木賞作家作品だけあり、流石にいい話だった。

本屋に並ぶ原作の分厚さをみるに、割りかし内容は省かれていたのだろうか? 掘り下げるキャラクターを絞っているために、何人かは愛着が湧く前に終わってしまったのが少し残念であったが、それでもそれぞれのキャラたちが仲を深めていく孤城内での描写はみていて楽しく、それぞれの過去に胸が痛くなり、アキを救うために力を合わせるラストには素直に感動した。

こころ達の心の傷の原因となった周囲の人間だけでなく、主人公サイドの綺麗なだけでない嫌な部分もしっかりと描いている。これがあるから、少しずつ成長していくこころ達の姿が一層愛しく、ままならぬ現実の中にも救いを見出すことができたように思う。

全体的に対象年齢層は広く作られているように感じられた。それ故に、物語の鍵となるような謎は序盤の方から簡単に推測できる。ただ、それが悪いわけではなく、むしろ本作のメインターゲットとしているであろうティーンエイジャー層にはちょうど良いくらいのものになっていると思う。
居場所がないとまではいかないまでも、ちょっとした生きづらさを感じているすべての人に観てもらいたい。そんな優しい作品だった。
滝井椎野

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