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神は見返りを求めるのxoのレビュー・感想・評価

神は見返りを求める(2022年製作の映画)
4.0
相変わらず吉田恵輔監督はすごい。105分の密度の濃さたるや。今までもだけど今作は特に、喚起させられる感情が重層的。楽しいのか悲しいのかもわからない、言語化しがたい気持ちを抱かされっぱなし。

お話としても思いがけないところまで連れて行ってくれる。吉田監督らしく、一つの方向に流れそうになると揺り戻しがあり、決して安易にわかった気分にさせてくれない。
岸井ゆきのもムロツヨシも”良い人”に収まろうとしないし、YouTuberや彼らが作るYouTubeをめぐっても、批判的なだけじゃなくそれを称える台詞が不意に入ってきたりする。

過去作以上に色んな視点がある。
搾取と搾取されていることに気づかない悲しさ、”残らない"表現と"残る"表現に付きまとう優劣の見方、客観的な痛々しさと直向きな主観、成功と拝金主義、優しさと承認欲求、嫌悪や憎悪のエスカレーション、あらゆるもののコンテンツ化・ネタ化、倫理の線引きとは…?
それらがYouTubeという究極的に敷居が低くポップなフォーマットの上で露悪性たっぷりに表現される。

だけど最終的には他作同様、人と人との関係性の変化と心の距離をめぐる話に。表裏一体の”好き"と"嫌い”。好きだけど嫌いだし嫌いだけど好きってこともあり得るわけで、一見するとわかりやすい表現の仕方で、わかりづらい感情がうまく表されている。

以下、その他雑感。

一瞬だけど、オープニングとエンディングの"あれ"も気が利いている。最初、試写会だし写しちゃいけないものが写っちゃってるような気になったけど。笑

若葉竜也が最高に良い味を出してた。「えっ? なんすか⁈」がうますぎる。。

”ユリちゃん”のアクセントがユじゃなくてリにあるのがなんか良い。どうでもいいようでいて実はよくないニュアンス。吉田監督はほんとこういうとこから抜かりない。

Youtuberのみならずインスタグラマーにしろティックトッカーにしろ、成金にしてもかつて存在し得なかったタイプの成金なんだろうな。。意識高い系(今作にも登場)はまだ理解できたんだけど。。。。

Yotuuberの奮闘記!的な宣伝だったりビジュアルの提示の仕方だったりはどうなんだろう。作劇上、YouTuberやそのYouTubeをメタな視点で見ることになるわけで、監督の作品でいうと「銀の匙」みたいなのとは根本的に異なる見方をすることになる。ある程度のリテラシーは必要だし、勘違いで見に来ちゃった”素朴な人”たちが変な感想を抱かないかが心配。。

田母神俊雄とは特に何も関係なかったね。。
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