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神は見返りを求めるのkazukiのレビュー・感想・評価

神は見返りを求める(2022年製作の映画)
3.2
皮肉を通り越し, 嫌味になったブラックコメディ

吉田監督ならではのスレ違い感や、現実のイヤ〜な所を描こうというらのは分かるのですが、登場人物がバカ過ぎるあまり、見ていて「うわぁ〜こういうのある...」という恐怖を感じませんでした。

多くの人が指摘する通り, 描かれるYouTubeを取り巻く環境は些か古めかしいし露悪的に戯画化されています。「監督がYouTubeをバカにしてるのが透けて見える」という人もいて、それも分からなくはない。しかしブラックコメディとして見れば描かれ方自体は理解できる。ただ人物描写や行動は先に書いたようにスベッている。


例えば「私達は馬鹿な事でも真剣にやってんの!」「もっと自分が楽しいと思う事をやって記録出しなよ!」という主人公のセリフは響かない。ゆりちゃんは元々楽しい事をやりたくてYouTubeをやっていないからだ(フラフープしながらスパゲティを食べる事が本当にしたかった事ならもう何も言えないが)彼女は最初からバズって人気になる事を目指している。承認欲求を満たす事+お金を稼ぎ.. 好きな事して稼ぐ! というやつで、要はビジネスである。その割には爪が甘すぎて(社会人なのに!)恋人商法宜しく協力を取り付けた田母神

撮ってた側が撮られるといった逆転も何度も描かれる。誰でも有名人になる可能性があるなら、誰でもパパラッチに晒される可能性がある、又は他人を弄って飯の種にしてる奴は他人に弄られるのだ、YouTubeがビジネスになった事で戯れの場から弱肉強食の合戦場と化した。(本作で描かれるような、2000年代テレビ番組のようなエグさ売りのチャンネルばかりという状況は最早現代的ではないが)

しかし、この逆転を見ていても「そういう事もあるよね」とか逆に「こんなのないでしょ」という  会話が出来るかなぐらいで、そこに対する面白みや何かしらの気付きは無いように思う。

ラスト、ついにムロツヨシが発狂し「誰の目も気にしないでバカをやる! 」シーンは『悪魔のいけにえ』を彷彿とさせる。やりたい事をやって生きていく事のエグみを皮肉っていると言えばそうなのかもしれない。が、その前提であるキラキラワード【やりたい事をやって生きていく】自体安い広告文句である事は世間的に自明では無いだろうか、、? 要は尽くブラックジョークが成立していないので、面白くないのだと思う。。
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