たく

その瞳に映るのはのたくのレビュー・感想・評価

その瞳に映るのは(2021年製作の映画)
3.7
第二次大戦中、ドイツに占領されてたデンマークで誤爆された小学校の悲劇を描いてて、一般市民と戦争遂行側それぞれの視点から戦争の虚しさを浮き彫りにしてた。中盤まで普通の人間ドラマで、そこから爆撃作戦に入ってラストまで一気に持っていく緊迫感に引き込まれた。

冒頭でタクシーに乗るキャピキャピした一般女性たちが戦闘機の爆撃をくらうのがいきなり残酷シーンで、惨殺死体を見た少年がショックから失語症になる。彼の家族の慎ましい暮らしと、風変わりな教会のシスター、そしてゲシュタポの予備警察であるHIPOに所属する男性それぞれの生活や葛藤、秘かな恋が描かれていく。中盤まで何事も起こらないので登場人物たちの人間ドラマがメインなのかなと思ってたら、英国軍の爆撃作戦が開始するところから緊迫感が漂ってくる。

爆撃作戦で戦闘機が目的地に着くまでの緊張感がたまらなくて、ここから目を覆いたくなるような悲劇が展開する。冒頭で誤爆をしたかもしれないと罪の意識を抱えてるパイロットが、チームがまたもや標的を間違えてることに気づくのがいたたまれなかった。学校の地下に閉じ込められた人々が救助をひたすら待つシーンが観てて辛く、なんとか救助が間に合ってくれと祈るばかりだった。朝にお粥を食べなかったことで「食べないと死ぬ」と怒られたエヴァが、家に帰ってお粥を食べてたのが印象的。つまりお粥を食べなかったから実際に爆撃で死にかけたので、ちゃんと食べなきゃって思い直したんだろうね。

失語症のヘンリーの克服と、彼の守護神のようなリーモアが水没でだんだん喋れなくなるのが対比的に描かれるのがあまりに残酷過ぎた。
たく

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