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ハンドファートのdm10foreverのレビュー・感想・評価

ハンドファート(2016年製作の映画)
3.3
【♪止めろっと言われてんもぉ♪】

先日62355cinema5さんより教えていただいたショートフィルム。

人は「無くて七癖」なんて言ったりするくらいに、何かしらの癖を持っている。
ペンを持つと必ず回しちゃったり、緊張するとやたらと頭を掻いたり、意味もなく指をポキポキならしたり、嘘をついたら鼻の穴がプクっって膨らんだり、お札を数えるときに指をペロッと舐めてみたり(高齢者に多い)、会話の語尾に必ず「~ね」ってつけてしまったり、歯磨きしながら「オ・・オェ」ってならないと気が済まなかったり・・・。

で、中学生の頃のクラスメイトにこれが癖の奴がいたのを思い出した。
両手の平を合わせて「プ~」ってオナラみたいな音を出すやつ。
これに「ハンドファート」なるオシャレなネーミングがあったことは今回始めて知ったんだけど、そいつはとにかくこれを極めていたので、音の大小だけではなく高低や長短などありとあらゆるタイプのオナラ音を自由自在に操る「マスター・オブ・ザ・屁」だった。

でも、ちょっぴり空気が読めない部分もあった彼は「プゥ~=ウケる」と認識していたらしく、たまたまウチの生徒が事故に遭ったために開かれた臨時の全校集会の静まり返った空気を引き裂くかのように「プゥ!」と思いっきりかまして、学校イチ怖い社会科教諭の通称ガンジーからしこたま殴られていた。
(・・・ガンジーのくせに全然非暴力じゃなかった)

この作品は、もしそんな彼が見たら「余命宣告」にも等しいくらいの厳しい告知から始まる。
「あと一回それやったら死にますよ」
(・・・はて?何を言ってますの?)
でも本人のポカ~ンを他所にどんどんシリアスになっていく診察室。

≪コード・ブルー!コード・ブルー!≫
≪急いで看護師を呼べ!!≫

「コード・ブルー」とは、いわゆる病院で使うエマージェンシーコールですね。
全館放送でこれが流れると院内の医療スタッフがスクランブルでその場に駆けつけるという魔法のサインです。
本来は外部の方が聞いても混乱を起こさないようにという配慮での隠語的な医療用語だったのですが、『山P×ガッキー×ミスチル』でゴリゴリの月9ドラマまでやられたら、そんなもん隠語にはなりませんて・・・。

かくして状況が飲み込めなきまま緊急入院させられてしまう主人公のスタンリー。
病室で目を覚ました彼は看護師さんから「運がよかったわ」と説明を受ける。
・・・でも、やっぱり納得いかん。
所詮ただの「クセ」ですやん。
手と手を合わせて「プゥ」ってやるだけでなんで命の危機になりますの?
そもそも何で緊急入院?

・・・そうは言ったものの、やっぱり「命の危機」って言われるとさすがに怖い。
(きっと大丈夫だよ・・・)って思いながらも(でも、もし万が一・・・・)っていう思いも消えない。

普段は何気なくやっていたクセだから、もちろんやらないことだってあったしそこまで深く意識したことも無かったけど「やるな!」と言われると何故だか無性にやりたくなってしまう・・・。
これって「押すなよ!押すなよ!理論」ですかね?(ちょっと違う?)
そして遂に我慢ができなくなったスタンリーの両手は惹かれ合うように重なり合い・・・・

ホントやったんか~い(山田ルイ53世風)。

どこかに「なんちゃって」的なオチを用意しているのかなと思いきや、まさかの直球ストレート勝負。
エンディングの「院長がさめざめと泣くシーン」がちょっと長いのが逆に面白かった。
だって本編が5分しかないのにそのうち1分以上が最後の院長の泣きシーンだよ。
これはウケ狙いでしょ。
お薦めはこのシーンをYoutube の自動翻訳字幕付きで観ることです。
台詞もなくただ泣いているだけの院長に何故か字幕がつくんですが(すすり泣く・・・)まぁこれはいい(でっかいブサイクな男が泣く)え?(もっとすすり泣く)・・・(うん、まだ彼はやってる)もうほっといたれよ!
・・凄いな、Youtubeの自動翻訳機能の破壊力。
即席で本編には無かったはずの第三者目線的笑いを意図も簡単に作ってしまう。

うぬぬ・・・・AIの笑いのセンス、恐るべし。
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