Jun潤

君たちはまだ長いトンネルの中のJun潤のレビュー・感想・評価

2.8
2022.06.22

Filmarksで見つけて、青春感のあるポスターとタイトルに惹かれて。
前情報はおろかキャッチコピーすら碌に見ていなかったので、中身についての予想が全くつかないどころか、本当にゼロベースの状態で鑑賞。

女子高生の高橋アサミは、授業中に早弁し出すようなちょっと気の抜けた女の子、かと思いきや、経済の授業内容について先生に対して自分で調べた知識で正論ストレートパンチを喰らわすクセあり少女だった!
そんな彼女がクラスメイトを巻き込み、商店街のお祭を盛り上げようと地元新聞に直談判に向かうことに始まり、周囲の大人たちに自分の意見を言って今後の日本の経済政策に対して疑問とさらなる議論を投げかけていく。

むむ、これは、、薄…くない?
なんとなーく感じていた日本の不況の現状についてや、漠然と大きくは成功していないイメージアベノミクスについてのセリフについてははぁなるほどなぁという感じでしたが、説明する気持ちが前面に出ていて如何せん映画作品というよりも教材ビデオ感が強め。
せめてもの救いとしては今作が野党側や反体制派のプロパガンダ作品ではなく、経済音痴だった著者が自分で調べたものを広く知らせるための漫画を原作とした作品だったことですかね。

序盤の授業場面に始まりアサミが疑問に感じ周囲に投げかける内容は終始一貫していた印象。
しかしそれしか言ってない上に、良くも悪くもアサミの姿勢が自分の考えを押し付けるのではなく、自分で調べる力、長いものに巻かれるのではなく大局的な視点を持つことを投げかけていたので、観る側に伝わるメッセージ性も単調だしキャラクター同士のぶつかりがないから、青春映画ならではのカタルシスの発揮しようもなく物語の起伏はほぼないようなもの。

今の日本の問題点、抱える課題、今後実現し得る可能性については前述の通り教材ビデオのようなので腹落ちはするしなるほどなぁという感じ。
日本もまだまだ捨てたもんじゃないし、自分で考えてできることをすれば良い方向へ進むことに希望を持てるかもしれない。
と言っても他の作品が示しているように、日本の闇はもっと濃くて粘りついていて簡単には引き剥がせないものなのではないかと、思ってしまうのもまた辛いところ。

個人的にいいなと思ったのはタイトルにある『まだ』。
開始直後のナレーションにあった通り、僕の世代的には好況を知らないから不況が当たり前になり、経済的に良い時代を知らないからそこに戻るためにどう動けばいいのかもわからない。
作中でのアサミの行動や今作の鑑賞が直接すぐに経済に影響を与え、トンネルを抜け出せるわけではない。
今が『トンネルの中』であり、抜け出すには長い時間がかかるから『まだ』なのだということを知るきっかけに、なるといいけどなぁ…。
Jun潤

Jun潤