Masato

非常宣言のMasatoのレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
4.1

今だからこそハッとさせられる

ソン・ガンホとイ・ビョンホンが共演した韓国の超大作アクションスリラードラマ。超大作だけに迫力ある映像とスリリングな展開の連続は見事だし、韓国映画ならではの人間の本性を描き出した物語、そして時事性を盛り込んだテーマが見事で、エンタメも社会性も見事な一作だった。

航行中の飛行機内でのバイオテロ…というとワンシチュエーション的な映画に見えるが、地上のソン・ガンホ、空中のイ・ビョンホンでテロの全容をしっかりと見せていく。しっかり描く分テンポは思ったほどあまり良くはないが、それ以上にドラマを見せてくれるので、クオリティとしては高くなっていた。

おそらくコロナ禍の情勢から着想を得たと思われる物語で、ウイルスにより分断されていく国家や国民の姿がとても時事的で良い。テロのゴタゴタやウイルスを国内に持ち込ませまいと非情な決断をする各国。それを受けて新たな事実が明かされていくなかで、韓国国内でも分断が生まれていく。

打ち付けられる残酷な現実に、嘆きながらも機内の人々は現実を受け入れるしかないと覚悟を決めていく。劇中で繰り広げられる様々な出来事がコロナ禍であったようなことと同じで、それを打ち付けられる機内の人々のいたたまれなさは我々の実体験とリンクしてくる。(特に日本でのダイヤモンドプリンセス号)

そんな現実に光を照らしてくれるようなソン・ガンホ扮するク刑事の行動とクライマックスの展開に、非情な決断を下すのも時には必要だが、人を助け想うことの無上さも説いてくれているような気がして感動した。

こうしてコロナ禍の大局的な国家の動きや国民の世論などをまざまざと描くのは韓国映画らしく意地が悪いというか、リアルで良いし、テロパニックモノなのに生々しい人間ドラマに収束していくのもらしくて良かった。そして、こうした社会性をエンタメ超大作として昇華する上手さは見事としか言いようがない。

ひとつ個人的に気になったのは、後方へ行け行けオジサンが悪者扱いみたいな描写になっていること。言い方はかなりアレだし非情ではあるが、生き死にが懸かっている中なので結構マトモでは?と思う。
Masato

Masato