深獣九

非常宣言の深獣九のレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
4.0
たったひとりの悪意が、雲の上に地獄を生んだ。

最初から最後までクライマックスしかないので、心を休める暇がない。緊張しっぱなし。疲れた。とにかく疲れた。もうやめてーって何度叫んだことか。

ソウルからホノルルに向かう旅客機の中、バイオテロが発生するという話。
あーはいはいここから犯人の要求があって動機が判明して主人公の身内が乗客で墜落しそうになって背後に巨大な悪がいてヒーローがねわかるわかる『ダイ・ハード』式ね、と一瞬で理解しあくびをしそうだったのだが、そこから展開が二転三転。開いた口が最後までふさがらなかった。
いろんな要素がむくむく湧いてきて、ボンボン爆発して、もうすべてにハラハラして心臓がもたん! の2時間だった。

飛行中の旅客機で感染力の高いウィルスがばらまかれたらどうなるのか? 乗客の命は助かるのか? もし操縦士の具合が悪くなったら? 燃料が足りなくなったら? など鑑賞前から想像できるアクシデントはあるけれど、それを軽々超えてくる展開はさすが韓流。そこにシビれるあこがれるゥ!

劇中、次から次へとクライマックスポイントがやってくるが、物語は一向に収まる気配がない。ちらりと時計を見れば、まだ40分も残っている。え? どうすんのこれ? どこに着陸させるつもりなのー!(旅客機だけに)
韓国映画だからと最悪の結末も覚悟しつつ、終幕を迎えた頃には椅子からずり落ちていた。体の緊張は解けたようだ。心はまだぎゅうっと絞られたままだったが。

パニックになった乗客のひとりは、自分が助かりたいがために弱者を威嚇し排除しようとした。地上でも同じようなことが起きていた。あのときの日本でも。

コロナ感染症が現れた初期、日本は横浜港に感染患者を乗せた旅客船を受け入れた。あの頃はまだ未知のウィルスだった。千葉県のあるホテルが、反対を押し切って隔離先として患者を受け入れた。

日本で起きた未曾有の災害を、少しだけ思い出した。

心臓の悪い方や血圧の高い方、近々飛行機に搭乗予定の方は、くれぐれもご注意いただきたい。
伝わりにくい感想で申し訳ないが、少しでも面白そうと思ってもらえたらうれしい。

ツッコミどころや既視感はない、とは言わない。だがそれを補って余りあるスリルと恐怖、高揚感は保証する。2023年まだ劇場デビューしてない方はぜひ本作で。
深獣九

深獣九