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非常宣言のmatchypotterのレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
4.1
先週観るはずが仕事が忙しくて遅れた。

ソンガンホ、イビョンホン。
どっちもめちゃくちゃ男気溢れてアツい。
地上のソンガンホと、上空のイビョンホン、良い。面白かった。

『ユナイテッド93』の時のような手に汗握る一般乗客や搭乗員、パイロット、そして地上の緊張感。
ハラハラドキドキ、しかし、ほぼほぼ絶望、という切迫した状況をどう切り抜けるか、切り抜けられないか、これが最後までわからない。

“非常宣言”、航空機が如何ともし難い状況下で、地上のすべての制御を無視して行動を行使できる宣言。その権限は“戒厳令”と等しい。

そんな説明から始まるこの映画。
最初から物々しい雰囲気で始まる。重低音が効いてる音楽がついて回る。
明らかに不穏で、重大で、緊急で、絶望的なことが起きることを“それ”が起きるまでずっとずっと案に示すかのような演出。重厚。

もちろん最初は、人物紹介も兼ねて、イビョンホンはじめ、それぞれの人がその飛行機に乗るまでを描き、ソンガンホは地上の警察としていつもの捜査風景を描く。

しかし、明らかにイカれてそうなスーツの男が空港で明らかに挙動不審な行動を取ったり、明らかに意味不明なことを窓口に尋ねたり、情緒不安定だったり。

その演出とこの男の出現によって、皆が不穏で狂った何かに巻き込まれていくことが確定している重苦しい立ち上がり。
基本はこれの絶望感、逼迫感が常について回る。

一見ただの飛行機の揺れを恐れる子連れの乗客イビョンホンにも過去があり、それが活きてくるエピソードがあったり。

地上のソンガンホも熱血捜査官かと思いきや、それ以外にも今回にかける別の思いとできごとがあったり。
いつまで経っても空と地上で交わることのない話かと思いきや、ソンガンホがその一線を超えたり。

韓国からホノルル行きの飛行機。
“非常宣言”を布告したところで、超えられない国の壁。
今すぐに着陸したかったとしても“ワケあり”の民間旅客機が許可もなく他国に着陸することは人命救助やテロ行為云々の前に外交問題。

その辺りの国際的な背景やテロや細菌、感染という最近の日本でもやや身近になってしまったコンテンツがある。

その上で、世界各国の水際対策的な応対、テロや危険を未然に防がねばならないが故の拒否、証拠や令状もなく外資系の企業に立ち入り調査できない、など国境を超えた難題がさらに彼らにのしかかる。

絶体絶命、なす術なし。
燃料も限りがあり、そもそも機内では刻一刻と侵されるウィルス感染。

イカれた男の背景、乗客の背景、機内の模様、警察達の地上での暗躍、そして、政治。
『シンゴジラ』並みの行政や警察の手続きのめんどくささも描かれる。

1機の韓国発の旅客機。
皆が楽しい思い出作りや心機一転、それぞれの楽しい旅になるはずのフライトが、乗客だけではなく、韓国の国民、そして、世界の人々に対して命の尊厳すら問うてくる圧巻の作品。

色んな要素を盛り込んでるので、ものすごい展開早くてスピーディーで急ピッチなジェットコースタームービーであっても少々長い。
だけども、どれもが不可欠なネタであり無駄はない。

上空だけが大変な映画かと思いきや、地上でまさかの命を投げ出す無謀な行為に出るソンガンホや、イビョンホンと副操縦士の何やら“ワケあり”の過去を経ての最後の「僕でもそうします」のやり取り。
胸にグッとくるスカイパニック映画。

バッドエンドではないが、かと言ってハッピーエンドかと言われると何となくそうとも言い切れないモノもある。

事態が事態だけに、みんなが無傷で誰1人欠けることなく全員無事で生還しました、みたいな明るく楽しい話ではない。
その辺を絶妙なラインで描く。
ハートフルでハートウォーミングでスリリングでショッキング。

にしてもあの犯人、マジでイカれてる。演技が一線越えて本当に生理的にザワザワする。

映画館で観てよかった。やはり韓国映画は面白い。


F:1962
M:5214
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