Jun潤

ザリガニの鳴くところのJun潤のレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.5
2022.11.18

予告を見て気になった作品。
2019年、2020年アメリカで最も売れたというミステリー小説を映像化。
あまりがっつり謎解き謎解きする洋画はまだ観たことがありませんが、邦画との違いや制作体制の違いからくる見応えはどのように変わってくるのか、そんな違いにも目を向けつつ今回鑑賞です。

1969年、アメリカのノースカロライナ州にある広大な湿地帯で、男性の遺体が発見された、
現場の状況から殺人事件と判断され、捜査が開始する。
容疑者として疑われたのは、湿地帯に暮らす少女だった。
少女はすぐに逮捕され、弁護人がついた時、彼女はカイアと名乗り、過去を追想する。
法廷で繰り広げられる真相追求、カイアの過去の出来事から、事件の全貌が明らかになっていくー。

広大な湿地帯、そこに存在する雄大な自然、生息する動物たちの営みを背景に、淡く、悲しく展開される人間ドラマ。
ミステリー成分と相まって、随分と濃厚なストーリーが展開されていました。

トリックだとかアリバイだとか、そこまでミステリーミステリーもしておらず、かと言って複雑な人間関係が展開されるわけでもなく、カイアの辿ってきた悲惨な人生と、その中に訪れる出会いと別れを起点に、法廷を舞台にした舌戦が繰り広げられるという、日本でもあまり類をみないジャンルの様相。
一般化した家族関係や男女関係ではなく、家族と離れ、湿地帯の自然と共に1人だけの世界を生きてきたカイアにとって、心情を共有することができる男性の存在というのがどれほどのものなのか、現実生活であれば想像し難いものですが、作品を通して見るとどのような事実であっても脳みそを掴まれた気になりますね。

人と人との間で生きてきた人間ではなく、湿地帯の中でカイアは、ヒトとしての生命を生きていたのではないでしょうか。
そんなカイアが人と繋がり、人間になっていく過程。
結末で全ての真相が明らかとなりましたが、それを受けて、カイアは人間としての人生を全うできたんだなというのが伝わってきました。
その受け取り方は観た人次第な気がしますが、個人的にはカイアの過去を考えると救われた結末に思いました。
Jun潤

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