一粒万倍日

ザリガニの鳴くところの一粒万倍日のレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.1
街の人たちは、カイアのことを「湿地の娘」と呼んでいた。
”湿地”にひとり住んでいるというだけで、特異な目で見られ、先入観やうわさ話などから差別を受け、偏見を向けられる。

話は約60年前のノールカロライナ州の自然豊かな湿地帯で展開される。

母親から愛情豊かに育てられていたカイアが、父親のDVが原因で一家離散となり湿地帯の家にひとり取り残される。
学校も福祉も誰もカイアを守ることも救うこともなく、むしろ学校でバカにされた経験から人と関わらないように生きていくことに。

自然だけが自分を傷つけたり裏切ったりしない存在でした。

そんなカイアを唯一見守ってくれたのが雑貨屋の夫婦と、兄の友人ティム。

が、ティムに約束をすっぽかされたことから、更に人間不信へと。

壮絶な生育環境下では歪んだ感情を抱いてしまうことがあるゆえに、特異な目でみられたり偏見を向けられてしまうのは仕方がないことかもしれない。

カイアが自然に包まれて暮らし、心のより処となった自然を観察し、母親から受け継いだ絵の才能から書き溜めた湿地帯の自然観察図鑑を出版するまでに至る、自分を裏切らない自然に対する純粋な愛情と、

一方で、自分を傷つける人に対する憎しみの感情。

ラストの展開に、先入観で人を決めつけることは間違っているけれども、もしかしたら先入観は大きくは違っていないのか?、または…、まさしくミステリーだ。

あの大自然の中で6歳から一人で暮らしていったカイアの強さと孤独さと危なさを想像すると、不思議な余韻が残りましたが、私個人的にはハッピーエンドな映画でした。