一粒万倍日

ラーゲリより愛を込めての一粒万倍日のレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.0
辺見じゅん氏のノンフィクション『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』原作、監督は瀬々敬久さん、主演は二宮和也さん。

第二次世界大戦後に満州から捕虜となった日本兵やスパイ容疑をかけられた日本人たちのシベリアの収容所で起きた実話で、長い捕虜生活から解放されたのは1956年の日ソ国交樹・日ソ共同宣言により日本とソビエト連邦の交戦状態が終わり国交が正常化されたことによるとのこと。

いや~、11年は長すぎる~~。

冬は氷点下40度にもなる過酷な環境での重労働と監視された捕虜生活に加え、戦争は終わったにも関わらず戦時中の日本軍のヒエラルキーがそのままというのもさらにストレスがかかっていた。

戦時中の上官からずっと一等兵呼ばわれされていた山本幡男(二宮和也さん)は、「一等兵でなく、山本という名前があります!」と言い続ける。

過酷な環境下に置かれた時、人は人間性が現れると感じました。

生きる希望を捨てず、帰国(ダモイ)を信じて周囲の人々を励まし続けた山本さんの仲間思いの行動と力強い信念は、多くの捕虜たちの心に希望の火を灯していきました。

こういった状況下では、教養や知性が生きてくるのですよね。

歌や野球といったスポーツや将棋などを楽しむことで気晴らしとなって、明日への活力となっていました。

最後は収容所の皆が人として平等となり団結して、山本さんの病気を病院で診てもらえるようにハンストを起こしたり、山本さんの歌っていたアメリカ民謡を皆で合唱して病室に届けたり。
そして野良犬だったクロの忠誠心も山本さんの愛情から。

そして日本で暮らす妻や4人の子供や母への想いを、ダモイ(帰国)が叶った仲間たちがしっかりと伝えたという事実に、大切な人との繋がりと命の重さを感じました。