第70回読売文学賞を受賞した平野啓一郎の長編小説『ある男』を、石川慶が監督、妻夫木聡主演で映画化。
第46回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞。
原作未読。
戸籍は普段目に見えないもので、就職や結婚のような特別の機会がなければ他人に知られることはまずないもの。
多様性を認め受け入れる世の中へと意識は徐々に変わってきてはいると思うが、アイデンティティーであるそれを受け入れて生きていくのか、それとも不幸に感じ足かせとして生きていくのかは本人次第。
でも犯罪者の息子としては、全く理不尽なアイデンティティーを背負わされてしまったわけで、リセットできるなんてなんとありがたいことか。
「小林誠」(窪田正孝さん演じる)が、「曾根崎義彦」の戸籍に交換しさらに「谷口大祐」(仲野太賀さん演じる)の戸籍と交換し、谷口大祐に成り代わって生きていく。
映画中では「曾根崎義彦」が出てこないのだけれど、「曾根崎義彦」は誰の戸籍と交換したのか気になる。「小林誠」の戸籍と交換したい人なんて誰もいないだろうから。
日本アカデミー賞では
優秀主演男優賞:妻夫木聡(役名:城戸章良)
優秀助演男優賞:窪田正孝(役名:谷口大祐/X)
優秀助演女優賞:安藤サクラ(役名:谷口里枝)
優秀助演女優賞:清野菜名(役名:後藤美涼)
など総なめした俳優陣の演技はもちろん良かったですが、
複雑な環境下の長男を演じた坂元愛登君の
「お父さんがいなくなって悲しくはないけれど、、
寂しい…」の間合いと涙の演技、良かったです。
また、妹には時がきたら自分から伝える!と。
話はそれますが、今放送のドラマ「不適切にもほどがある」の吉田羊の長男キヨシ役としての成長が見れたのも嬉しい。
それにしても、弁護士の 城戸章良(妻夫木聡)の奥さんの不倫も、城戸のアイデンティティーが影響してるんじゃないかと勘繰りたくなってしまう最後かも。