シミステツ

ザリガニの鳴くところのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

6歳の時、両親に捨てられ、学校にも通わずひとりで生きてきたカイア。ノースカロライナ州の湿地帯で見つかった変死体から浮かび上がる壮絶な半生。

グローサリーの夫婦のやさしさ。靴を与えてくれたり、ドレスを着せてくれたり。テイトの恋人になるシーンは素敵だった。風が落ち葉をかき集め、水の中で抱きしめ合ってキスする。二人は惹かれ合い導かれるように深く恋をしていた。
進学で離ればなれになる二人。カイアにとっても湿地の研究は出版社へ持ち込めばお金が稼げると進言してあげて、のちに土地を所有できるようになったのもテイトのおかげ。テイトを失ったカイアの心の穴をいつも湿地が抱きとめてくれたけど、そんな中チェイスが都合よくやってきて挙句に婚約者がいたDV&レイプ男というね。
仲間はずれにされ、蔑まれながらも強く生きること。湿地の娘というレッテル貼り。カイアが完全にテーゼ側(観客の味方)にいたし、裁判は「主張ではなく事実で判断してください」という言葉に尽きたし、これで終わっても良かったけど、無罪を勝ち取って、人生を全うしてから「貝殻の首飾り」が見つかるという大どんでん返し。「ザリガニの鳴くところ」に隠されていたというか、本質的に湿地側の人間じゃないと見つけられないような、よその者との「断絶」みたいなことも示唆されていて、逆にグッときた。湿地に、自然に善悪はないという台詞も効いていたし、生存のために奮闘するのが生き物という。ザリガニの鳴くところに骨を埋めるカイア。大どんでん返しがありながらもカイアが悪者に映らないというのも、描き方が秀逸な証拠だと思う。

湿地の映像がとても美しいし、ポスターで連想されるような仄暗いミステリー感はあまりなく、哀しくも愛に溢れた作品でした。