前田哲監督「ロストケア」 (@ヒューマントラストシネマ渋谷)
○胃癌で逝った俺の母が、今際の際に残した言葉。
病室に見舞った俺と妹を見て、「あんたら二人産むのしんどかったけど、こうやって2人で来てくれるの見たら、ホンマに産んどいて良かったわあ」
その夜、突然目を覚ました母は、「卒塔婆小町や卒塔婆小町やで!」
母は、何を見ていたのだろうか。“お迎え”というやつだったのだろうか。
○脳腫瘍で逝った俺の父が、今際の際に残した言葉。
実家療養していた父を、トイレに連れていこうと手を貸した俺に、「えらいどうもスンマヘンなあ、ご迷惑おかけしとります」
その夜、夕飯を食べながら、俺と妹に「お前ら、もう早う逝った方がええと思とんのやろ!」
父は、せん妄状態だったのだろうか。酒も呑んでなかったのに。
…という、肉親の死に間際を思い出しながら観て…
○そして、坂本龍一の「つらい。もう、逝かせてくれ」
尊厳死。安楽死。そのジャッジは誰が出来るというのだろうか。あまりにも重々しいテーマと演技だったので、正直疲れた。坂井真紀、戸田菜穂らの元美人女優のオバハンっぷりが良い。峯村リエのコメディリリーフに救われる。
柄本明さんと松山ケンイチ親子。特に柄本さん演じる構音障害で片麻痺の認知症演技は、リアル過ぎて辛い。ふたりのシーンも同じく辛い。辛過ぎる。原作は読んでないけど、どこかに救いが欲しかった。振り幅が狭いので、心が痛くなる。松山ケンイチの目と長澤まさみの涙には、釘づけにされてしまったけれど。
唯一の救いになったのは、長澤まさみだ。彼女が検事なら、俺は捕まりたい。捕まるぞ。さあ、何で捕まろうか。それを考えるだけでも、ああ楽しいぞ。