蘭

ロストケアの蘭のネタバレレビュー・内容・結末

ロストケア(2023年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

殺人は正義か悪か

介護に追われるお年寄りとその家族の現実にせまった作品

親が死に、介護から救われたと思う心は悪か
2人の取り調べのシーンで大友検事が斯波の殺人の正当化を否定するところで、どこか大友自身もその正当化に納得してしまう心境があり、でも殺人は許されないという葛藤と闘っているところ様子が印象に残った

彼が殺さなくとも誰かが殺していたかもしれないと言った台詞は本当にそうだと思う

事件の後介護士が飲みの場で言ったとおり、新しい出会いが訪れた遺族の場面もリアルだった
もしかしたら彼女もあのまま介護に追われ続けていたら自らの手を汚していたかもしれないが、斯波が代わりに手を汚したおかげで彼女は罪を背負うことなく生きていられているのかもしれないとも考えた

そして最後の方に少しだけ映るオムツを履いた親が冷蔵庫を漁り、卵やトマトが床に散らばってぐしゃぐしゃになってる奥で女性が呆然と座り込んでいるシーンが本当に生々しく一番心をえぐられた

実際に何年か前に母親を殺す事件があったのを思い出した
あの事件は日本の社会福祉の実態と介護の過酷さ、親子の絆の呪縛を世間に知らしめたものだった
この映画の後私はもし自分の親が介護を必要とするようになったらと考えた
私には兄弟がいるが、そのときは助け合い親を支えければならないと思った
その大変さは現在大学生である私には現実味が無く、上手く想像することは出来ないがいずれ訪れる未来
少子高齢化が進む今の日本でほとんどの人間が直面する問題なのだろうと思った
この問題が解決される日は果たして来るのだろうか

今の日本の社会問題に触れることの出来る良い作品だった
蘭