Jun潤

母へ捧げる僕たちのアリアのJun潤のレビュー・感想・評価

母へ捧げる僕たちのアリア(2021年製作の映画)
3.4
2022.06.30

ポスターを見て気になった作品。
前から気になってはいたものの、情報はなるべく入れず。
フランス映画はなかなか見ませんが、子供が主役だと涙腺をやられがちなので、泣きを期待して鑑賞です。

原題:『Mes freret et moi』
英題:『My Brothers and I』

病気で寝たきりの母を介護しながら暮らす4人の男兄弟。
その歳の離れた末っ子のヌールが夏休みに入り、家計を助けるため他の子供のように遊びもせずバイト三昧の日々。
そんな中で、母に聴かせ続けていたオペラを校内で聞き、音楽講師のサラと出会う。

む〜ん、これはいい青春譚。
いえ、そう言うと綺麗なものに聞こえますが、実際のところは少年の目から見た残酷な世界。

兄たちも純粋に母のことを想っているからこそ道を誤り、間違った方向へと進んでしまう。
兄弟たちの背景も相まって、幸せな結末など待っているはずもなく、苦味の残る切ない終わり方。
しかしそれでも、ヌールが出会った音楽とのこれからの関わりについては、ほんのりと希望が香る。

個人的には親戚も合わせて男兄弟の下の方で育ったので、そんな兄たちが弟に与える、良いも悪いもひっくるめた影響というのがとてもよく分かります。
それも含めて作中の描写にはノスタルジーを感じたり。
兄の言うことに納得がいかないけど逆らうこともできない、別に嫌いなわけじゃないから、一緒に行動はするし、なんとなく真似してみたり、心配になったり。
そんな単純なようでいて実は複雑な様子を、キャスト陣の演技もあって画面そのままの形で受け取ることができました。

ヌールやサラの歌い声もあって観心地のよさを感じつつも、兄弟たちの現状やヌールの今後など、様々な感情を想起させる一作。
Jun潤

Jun潤