HiromiA

シネマ組踊「孝行の巻」のHiromiAのレビュー・感想・評価

シネマ組踊「孝行の巻」(2022年製作の映画)
3.5
 組踊とは、琉球王国で中国からの使者である冊封使をもてなす役を任命されこれまでにないおもてなしを考案することを命じられた玉城朝薫が創作した歌舞劇とのこと。話の筋は単純だけど台詞をすべて旋律に乗せ、優雅な動きで表現する組踊はちょっと面白かった。母と姉弟の一家の旋律が同じでそのスピードが歳とともに緩徐になっていっていた気がしたし、王府の旋律は一家の旋律とは異なっていた。同じような言葉の繰り返しが耳に心地いい響きを残していた。果たして残された家族が優雅な暮らしができる様にするため自らの命を投げ出すことが孝行なのかどうかは劇中でも疑問視されていたが、結果的にはその思いが天に通じ大蛇を退散させることになったけど、母親の方はもし娘が投げ出した命で優雅な生活ができてもそれを良しとはしなかっただろうなあ。玉城朝薫は日本本土へ出向いた時の経験から日本的な手法や物語構成を学んだようなので、見ていて違和感のない作りだった。ただ言葉は琉球言葉なので字幕がないと全然わからんかった。それでも、言葉の分からない冊封使になったつもりでご覧くださいと冒頭の解説であったように、わからないなりにも楽しめる舞台にはなっていました。激しい動きがないので酒の宴の席だと寝てしまわないか心配になるほどでしたが、素面の身では十分堪能できました。
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