人々に希望をもたらした史実を基に描かれた感動的なヒューマンドラマ。この作品は、1945年日本の統治から解放され、1950年朝鮮戦争が勃発するまでの間に起きた韓国人のマラソンランナーの真実の物語だった。
かつて1936年のベルリンオリンピックで日本代表としてメダルを取得した2人の韓国のマラソン選手が、1947年韓国代表として歴史あるボストンマラソンに挑む。国際大会に参加して日本名ではなく本名で祖国の記録を取り戻すため、彼らは走ることを決意する。しかしまだその時代は、大韓民国として独立する前でアメリカの占領地だったため、参加するには様々な苦労があった。現地の保証人、莫大な費用、色々な難題を乗り越えてやっとの思いでボストンへ向かう。
1936年のベルリンオリンピックで金メダルを獲ったソン・ギジュン(ハ・ジョンウ)は、表彰台で胸の日章旗を隠したため、英雄だったにも関わらず、厳しい処分を受けてうだつの上がらない生活を送っていた。先輩で銅メダルを獲ったナム・スンニョン(ペ・ソンウ)は、マラソンのコーチをしている。ある日、ソ・ユンボク(イム・シアン)という才能ある若いマラソンランナーを見付けた2人は、ボストンマラソンに向けてチームを作ることにする。
アメリカの国旗は星条旗、日本の日の丸は日章旗。今回韓国の国旗が太極旗というのを初めて知った。太極と言ったら凄く中国っぽいが、中国のデザインを取り入れているのでこのように呼ばれるようになったらしい。因みに中国の国旗は五星紅旗。
彼らにとって、国際大会で太極旗をユニフォームに付け、本名で走ることがどれ程大切な事か、祖国を想う熱い気持ちがヒシヒシと伝わる。映画「マルモイ、ことばあつめ」でも感じた韓国の人の愛国心と誇りは、やはり日本の統治下での長い日々の苦しみから培われたものだろう。心に響く彼らの想いが胸を打つ。
演技派俳優、ハ・ジョンウがマラソンには厳しいが優しさが滲み出るソン・ギジョンを好演。ペ・ソンウのコミカルで優しい物言いが温かい。そしてあの「非常宣言」でサイコな犯人を演じたイム・シアンが別人のようだった。訓練を受けて体脂肪率6%まで落としたマラソン選手としてのリアルな肉体で、等身大の若者を清々しく演じている。
エンドロールで本人達の映像が流れ、長寿を全うして韓国マラソン会に貢献していた。韓国が誇る英雄達の素敵な物語だった。