耶馬英彦

ショーイング・アップの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

ショーイング・アップ(2022年製作の映画)
3.5
 長屋の人々が登場する落語の人情話みたいな映画だ。
 ケリー・カイラート監督は、2019年の前作「ファースト・カウ」では、食い物と女と金儲けのことしか頭にない男たちの様子を思い入れたっぷりに描いてみせたが、本作品では女たちが中心人物で、迷惑を掛け合いながらも、互いの存在を受け入れながら暮らす様子をユーモラスに描いてみせた。
 男たちは相変わらず自分勝手だが、悪意はない。主人公リジーの兄や父も例に漏れず、自分勝手で我が道を行くタイプだが、やはり憎めない男たちだ。登場するのは芸術系の学校の教授と学生で、芸術家は大抵がゴーイングマイウェイである。人のことを気にしないし、ひとから世話を焼かれることに抵抗がない。
 しかしリジーは芸術家でありながら、世話女房のようにあれこれと気を遣う。それはそれで幸せなのだろう。同じように身勝手なアジア人女性の大家とは、怒鳴り合ったりもするが、それでも仲はいい。やっぱり長屋の人情話である。
耶馬英彦

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