このレビューはネタバレを含みます
EOの目がとても綺麗で、美しい風景のショットたちがこの物静か（な役の）ロバの目に本当に映っているのではないかと、何度も何度も錯覚しそうになっては、いやこれは作り物なんだ、このロバは自分の意思で映画に出演しているのではなく、ただそこにいるだけだ、とわざわざ自分に言い聞かせたくなってしまうのは、ロバという生き物が人間よりは圧倒的に役者っぽくないからなのかもしれません。
子役を通り越して赤ちゃんを使ってストーリーを作り上げているようなものでもあり、なんとも気まずいような気持ちもありましたが、EOの静かで力強い鼻息の音、時々漏れる強いいななき、ふさふさのグレーの毛、歩く姿などがとてもかわいらしかったです。
時々人間が不可解な争いを起こしていたり、謎の殺人事件が起きたり、おそらくEOも人を蹴り殺していたりしたようですが、最後にEOが満員電車のような農場で繋がれることが多くの人間たちにとって大きな意味を持たなかったように、どれもこれもEOにとってはどうでもいいことだと思います。
イタリア系と思しき青年の故郷の、緑あふれる美しい庭の中でさえ、カサンドラと演じたあの妖しい赤い光のサーカスの演目がEOには忘れがたかったというストーリーは、少々少女というモチーフへの行き過ぎた憧憬を感じなくもないですが、人間が考えつくストーリーなんてそんなものかもしれないね。。
EOを演じたロバちゃんたちに幸あれ！
