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別れる決心のnanaのネタバレレビュー・内容・結末

別れる決心(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

パク・チャヌクの最新作。
ありとあらゆる映像表現を駆使し、観客も迷宮を彷徨い続けるような夢幻的な物語でした。

夫が山で転落死、そして他殺を疑われる妻というプロットは増村保造監督作『妻は告白する』っぽい。
『妻は告白する』の若尾文子も、『別れる決心』のタン・ウェイも、その美しさに劇中の男だけでなく観客もつい惹かれてしまう抗えない魅力があります。

タン・ウェイ演じるソレは決して「悪女」のような描き方はされておらず、今作はそういったミステリー、ノワール作品での「悪女」的なキャラクター造形への返答にも思います。

「愛してる」というキーワードが重要となるこの作品。
そして、人間は「愛してる」という直接的な表現を使わなくてもそれを表現することがある。
それを発する相手によっては、日常的な何気ない会話も、仕草すらもあなたを愛しているという信号になり得ます(そしてそれが一方通行だった時の虚しさはひとしお)。
今作で表現されるさまざまな愛の表現は、観客のフェティシズムをとことん突き刺してくるので、言ってしまえばかなり変態的な作品です。
機械音声(翻訳機)を使った会話すら、どこか色っぽく見えてしまう不思議。
一か所だけある直接的なセックスシーンの方が、むしろ空っぽで乾いているように見えます。

別れる決心をすることは、二度と忘れない、忘れさせないという決心をすることなのかもしれません。
愛は一種の呪いのようなものである…と書くとなんだかこの作品がドロドロしているように思えるかもしれませんが、鑑賞後はドロドロとは程遠い、名状し難い熱い感情が込み上げてきました。
改めて『妻は告白する』『めまい』とかも観返したくなる。

たとえその結果自分が「崩壊」してしまうとしても、見つめていたい人がいます。
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