このレビューはネタバレを含みます
◼︎印象的なカメラワークが多く、鑑賞していて楽しい。特に記憶に残っているのは張り込み中双眼鏡越しから室内への視点移動だったり、中盤の登山の場面での背後から登って鳥瞰へ転回するショット。カメラワークだけでなく、終盤で道路が画面を垂直に二分する画も含め、滑らかだったり幾何学的なのにそこはかとなく違和感。
◼︎性についても暴力についても直接的な描写は控えられていて、主眼となる恋愛の過程は微笑ましくも居心地が悪い。刑事と被疑者の若妻の接近自体はさして珍しい構図では無いものの、道ならぬ恋なのか被疑者の謀か、ツイストの効いた良きミステリー。
◼︎場所や時制の移動のテンポが独特で、中盤でスピード感に適応できるまでは都度混乱してしまった。決して悪いとは思わず、むしろ結果的に集中力を持続することを促す仕掛けになっていたかも
◼︎言外に伝わる愛の告白と、立場がそれを許さないって話はクラシックなテーマなんだが、まったく陳腐に感じない脚本はお見事
