Jun潤

CLOSE/クロースのJun潤のレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.5
2023.05.14

予告を見て気になった作品。
第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門グランプリ受賞、第95回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートなど世界中で高評価の模様。
予告編的に『怪物』のような性的マイノリティであることに悩む少年同士のノスタルジックな友情譚な感じ。
ポリコレ的に評価を得やすいのかもしれませんが、多数派の価値観では描けないドラマが少数派にはあると思いますし、今作にも期待が高まりますね。

レオとレミはずっと一緒にいた。
花畑や田園を駆け回る時も、レミがオーボエを吹く時も、レオがレミの似顔絵を描く時も、寝る時も、ずっと。
やがて、同じ中学に通うようになると、2人の関係は周りからは普通でないように見られた。
付き合ってるのかと聞かれても、親友以上で兄弟のような存在、それ以外の何者でもないと言い切っても、周囲は揶揄ってばかり。
そのことにイラついたレオは、レミのことを遠ざけるようになる。
レオとは違う友達、違う習い事、違う時間の登校。
揶揄われることも無くなり、これで良いのだと思った矢先、レミはレオの前から姿を消してしまった。
レオが抱える想い、その先にある人生とはー。

ものすごく私事ですがこれは僕の話でもありました。
地元の友達と会うことも減り、一人で出かけることの方が多い今となってはもう思い出すことも無くなっていましたが、今作を観て、僕にも作中のレオにとってのレミのような友達がいたことを思い出しました。
幼稚園からずっと一緒にいて、互いの家に泊まることもあったけど、中学生になって疎遠になり、相手に新しくできた友達に嫉妬して、寂しい想いをしたあの頃。
今にして思えば気にするほどの距離ではなかったのに、当時はものすごく遠く離れてしまったように感じ、それがそのまま会わないのが当たり前の今に至っています。

女の子同士でハグしたり手を繋いだりは当たり前なのに、男同士でやると周りから揶揄われてしまう。
それをとても恥ずかしがってしまうのは、親や女友達に対する態度の変化と同じように、思春期にはよくあることでしょうね。
それに男の思春期ともなると体つきが大人に近付いて、子ども同士のじゃれあいに力が入り過ぎてしまう。
だからこそ物理的に距離を取ろうとするけれど、それがそのまま心の距離になる。

レミはどこにも何も残しておらず、レミのしていなかったホッケーを続けて、レミとは違う友達と一緒に過ごしていても、レオの心の空白が埋まることはない。
ケガの涙の理由は、レミの苦しみには程遠いことへの悔しさか、レミと一緒にい続けていればケガをしなかったのと同じで、レミが遠くにいくこともなかったという寂しさか。
近くにいたのがレミだったんじゃなくて、レミだから近くにいてくれた。

今は大変な仕事も慣れていくように、学校生活は普通に過ぎていくように、レミがいないことも過ぎ去っていくことなのかもしれない。
レオには前を向いて目の前のことに精一杯夢中でいてほしいけど、時には後ろを振り返ってレミのことを思い出して欲しい、そんな願いのこもったラストカットだったと思います。
Jun潤

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