たらお

CLOSE/クロースのたらおのネタバレレビュー・内容・結末

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

※徹底的なネタバレ感想です。レオ、レミの心情を勝手に想像しています。
※長文乱文ご容赦願います。(後ほど訂正します)


兄弟のように育った親友との間に入ったわずかなヒビ。それは激情を生み、一生残る傷を負うことになる。そんなお話。
思春期特有の心の揺れ動き、葛藤や悩みを描いた一作かと。
LGBTとかそういう要素があると思っていたわけではなく、普遍的な友情、別れのストーリーだと思って鑑賞したためヘヴィな感情に襲われました。

レオとレミの二人の仲の良さ、絆の深さを序盤から丁寧に、暖かく描いてるからこそ中盤の突き落としっぷりに参ります。
あらすじに「突然の別れ」とありますが、流石にそういうものじゃないだろう、オーボエのスカウトされて転校するんだろ? 
なんてヌルい想像してましたが。一生の別れなんですね。
レミの自殺を告げられるシーンはレオとシンクロしてしまい、心ここにあらずですし、周囲の音が聞こえなくなりましたよ。
レオが自責の念に駆られ、誰にも本心を話せず、ケアも出来ないまま心の傷が化膿していく様を見せられるとは。
こちらも胸がジクジクと痛んできますよ。

中学生になり新しい環境、出会い、心身の発達から起きる悩みを正面から描いていましたね。
悪意がない、好奇心からにせよちょっとしたからかいをきっかけに少しずつ離れていく二人の距離。リアルです。
レオがレミに対してよそよそしくなったのも嫌いになったわけじゃない。でも、今まで通りにいるとまたからかわれる、恥ずかしいから。
それと孤立するのも避けたかったのでしょうしね。
集団心理も相まって思春期特有の心の動きには大いに共感しました。
この年頃になると新しく出来る友達のこともですが、今までの友達との付き合い方もおのずと変わるんですよね。
新しい環境で形成される交友関係、グループってのはどこでもありますし。
単純に変化のタイミングだったに過ぎないわけですが、レミはそれを受け入れられなかったんだと思っています。
いつまでも続かないとわかっていても、仲良しでいられるうちは仲良しでいたかった。それだけかもしれませんが。
でもレミもベタベタしすぎだし、スキンシップが強めな子とはいえ確かにあれじゃあからかわれるなり訝しげに見られてしまうわけで。
ちゃんと二人でその辺りを話せればよかったのですが、小さな溝を埋めることが出来ずにあの悲劇が起きてしまうんですよね……
ただただ辛い。

それとレオと違ってレミは内向的な部分あったんですよね。
レオはアイスホッケーを始めて新しい友達、輪に入っていたのにレミはそういうコミュニケーションが得意ではなかったみたいで。
親友のレオが変わっていく、遠くへ行ってしまう寂しさや不安もさぞ大きかったと思います。
繊細なのもありますが、レオから突き放されたショックはレミが今まで生きてきた中で一番のショックだったことでしょうね。
「友達は変わる」「その頃だから仲良く出来た付き合い」
これらは大人になればわかることではありますが、中学生には荷が重すぎました。受け止めきれなかったのでしょうね……


レミの自殺のあとレオが心の痛み、苦しみに堪えている様を見せられるのは直視出来ませんでした。
どんなに後悔しても、もうどうしようもない。
けれどもし、あの時に戻れたら……
って考えるのは痛いほどわかるので。
レオがアイスホッケーに打ち込んでいたのは実際のところ何かしていないと気を紛らわせない、レミへの複雑な感情に襲われるからなんでしょうね。
レオが急に兄に甘えだしたのも寂しさと不安からでしょう。
ズボン脱いでから潜り込んだのはおや? と思いましたが、レミと寝ていた時と同じように、ぬくもりを直に感じたかったからと勝手に補完しています。
レオがレミの家から帰るときに雨が降る演出は堪えますね。
レオを簡単に泣かせない監督のこだわりは完璧です。

レミの自殺に関しても死因が明らかにされないことと、遺体を映さなかったことはこれでよかったと思います。
確かにレオが突き放したことが引き金だったのかもしれませんが、その他にレオの知らない何かがあったのかもしれません。
レミの本心はレミしか知らないし、暴くものじゃないと私は思います。
作中のセリフにもある通り、「感情はその人の自由」です。
レミが自殺したのは結局レミの弱さだ。そう感じる人もいるでしょう。
そうかもしれません。でもレミに限らず他の人にとっては大したことない出来事でも、その人にとっては致命傷ってこともあるわけで。
その人の傷、痛みの度合いなんてその人にしかわからないからわかろうとしなくてもいいと思います。
『レミのことを想う会』みたいなものはレオとシンクロしていたので腹立たしかったですけどね。レオからしたらお前らに何がわかる。勝手にレミの心境を推察するな! と思わずにはいられなかったでしょう。
激昂して叫びたかった衝動と闘っていたと思いますよ。

レミの母に打ち明ける時の勇気も自分を罰してほしい気持ちが心の片隅にあったと思います。
レミの母もレオを罵ることも出来たはず。それなのに出来なかった。
息子の親友で、兄弟のように育ってきたレオを息子と同じように想っていたんですよね。
空っぽになった家を見つめるレオはより強い喪失感に襲われたことでしょう。
レミの両親らはレミを思い出すのもですが、レオのことを憎みたくないから引っ越しを選択したんだろうな……
と想像するとより切なくなります。

ラストシーン、レミと走っていた花畑を一人で歩くレオが幻想的にも見えました。どこかにレミの幻を探していたのかもしれません。
レオはこれからも残される者として消えない傷、痛みを抱えながら生きていくでしょう。
レミのことを忘れることなんて出来るわけがない。
お話の中であれだけのたうち回って、もがき苦しんでも終わっていないんですよね。生きている限りレミとの記憶、後悔が襲ってくると思います。
その痛みも後悔も全て抱えて生きていくしかないわけで。
それでも、どうか暖かい思い出を胸にいつまでも抱いてほしい。
たらお

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