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CLOSE/クロースのotomisanのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.2
 13歳の女子が詮索好きなのも、同い年の男子が詮索嫌いなのも普通の事だろうし、その歳ぐらいになれば挑戦的に交友関係と活動の幅を広めることも、他人の目を気にすることも不思議ではない。それが幼馴染へのネグレクトと認められるのか?
 誰よりもルネの自殺に関する上位の当事者と自認していたであろうレオである、カウンセリングがあれでどこまで真に迫れるだろう。ところで、小学校にも留年と飛び級があるベルギーなら教室の皆が13歳とは限らない。

 ルネの自殺をいじめが起因とする事また、性的少数者への迫害と疑うのも自然な事だ。しかし、どちらも当てはまらないと受け取る事もできるだろう。結局誰にも何も分からないが、レオだけがルネに明らかに責任を感じており、それをルネの母親が受け止めた事だけは分かる。おそらく、あれでいいのだ。
 ルネが死に際して何かしるしを遺したのかそれも明らかではないが、死後、ルネの私室に入ったレオに母親が「探し回った」とつぶやくのは死を仄めかした何かだろうが、それも成果を得たかどうか。だから、レオの言葉を事件の終止符として受け止める以外に納めようがない。またそれが、血こそつながらないが双子同然のレオへのねぎらいともなるのだ。ほかに何を信じればいい?

 この件は公的にはいじめの認定もインシデントまで、性的少数者への迫害も認められない事として収束するだろう。そこにはルネ固有の証拠がない以上、遺族の意見としてレオへの信頼ゆえ、その結論で異議がない事が表明されるだろう。
 しかし、いじめを受けた子が多くの場合転校してゆくようにルネの家族も移ってゆく。ルネが最期のときを過ごした現場で、施錠された扉を破った記憶も双子のような二人の思い出も拭い去ってただの不動産物件としておいてゆかねばならない。レオはこの家がやがて来住者を迎え他人の家になる事を忍ばねばならない。そうして自然にルネの事を遠ざけられるようになるのか、誰が知ろう。
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