田山信行

トリとロキタの田山信行のレビュー・感想・評価

トリとロキタ(2022年製作の映画)
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茨城県唯一のミニシアターあまや座さんへ。ここがなければダルデンヌ兄弟の作品を県内で観ること叶わないだろう。本当にありがたい。

コロナ以降は県内であっても極力遠出を控えていたらば訪れるのが実に3年半ぶりとなってしまった。そもそも出無精なので車で片道1時間以上かかるとなると行くのを億劫に思ってしまうのと更にここまで行くのに4市町村ほど跨ぎながら中々辺鄙な道筋を進んでいかなきゃいけんのもあるけど。もう少し近ければ足繁く通うのだが。

ダルデンヌ兄弟の作品は前作も上映していた筈だが上記の事情と、またベルギー近隣諸国の社会問題を描くというそもそもヘビーな作風がこれまたコロナ禍以降あんまり積極的に観る気になれなくて逃してしまった。

テイストとしては初期の作品に近いのだが……これまでの作品では登場人物の過酷な現実を見つめながらも最後には、仄かにでも必ず希望があった。本作にはそれがない。ずっと映画を通して社会を見つめ続けてきて、いよいよ明るい展望を見出せなくなってきたのだろうか。

愛の物語としては美しいかもしれない。しかし必ずあると思っていた僅かな希望を粉々に打ち砕かれるその瞬間にはガツンと衝撃を受けた。きっちりエンドクレジットまで打ちのめしてくれる。
田山信行

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