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聖地には蜘蛛が巣を張るのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
3.5
2000年から2001年、イランの聖地マシュハドで、娼婦として働いていた16人の女性が殺害される連続殺人事件が発生。
犯人のサイード・ハナイは逮捕されるが、女性蔑視の風潮が強いイランでは、警察が逮捕するまでに相当の時間を要し、またハナイを英雄として称える保守的な人たちも少なくなかったようだ。
この事件を扱ったマジアール・バハリによるドキュメンタリー「و عنکبوت آمد」(2002)を鑑賞したアリ・アッバシ監督が、脚本(アフシン・カムラン・バーラミと共同)を書き映画化した。
男性優位の社会で尊厳を保って生きる女性を演じるのは、当初キャスティング・ディレクターをしていたザーラ・アミール・エブラヒミ。
エブラヒミは2006年に元婚約者の男性からプライベートセックスのテープを流出させられスキャンダルになりイランの芸能界から実質的に追放されフランスに拠点を移していたが、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。
原題:(英) Holy Spider、(ペルシア) عنکبوت مقدس‎ (2022、118分)

イランの聖地マシュハドで、「蜘蛛殺し(スパイダー・キラー)」が娼婦を狙う連続殺人事件が発生。
犯人を英雄視する声も上がる中、捜査に消極的な警察に不信感を抱いたジャーナリストのラヒミは、地元の記者と手を組み、自らオトリとなって犯人を探す…。
やがて退役軍人のサイードが逮捕されるが、ファトワー(イスラム法)を実践し街の浄化をしているというサイードをヒーロー的と崇める熱狂的な支持者たちと家族がいた…。

~登場人物①ジャーナリスト~
・アレズー・ラヒミ (ザーラ・アミール・エブラヒミ):主役。
・地元の記者シャリフィ(アーラシュ・アシュティアニ)

~登場人物②殺人犯と家族~
・殺人犯アズィミ・サイード (メフディ・バジェスタニ)
・妻ファテメ(フォルザン・ジャムシードネジャド)
・息子アリ(メスバフ・タレブ)
・幼い娘2人

~登場人物③被害者の娼婦~
・ソマイェ( アリス・ラヒミ)
・ソグラ(アリアン・ナジリ)
・ジーナブ (サラ・ファジラット)

~登場人物④その他~
・警察官ロスタミ ( シナ・パルヴァーネ)
・有力者、サイードの退役軍人仲間ハジ (フィルーズ・アゲリ)
・判事(ニマ・アクバルプール)

街を浄化のために娼婦を殺すことは神アッラーに従がいイスラム法を実践することで罪には問われないという世論や風潮が根強く残っているイラン社会。
そこでは、娼婦を買う男たちは浄化対象にはならず、娼婦を産み出している女性蔑視社会を問題にする視点も欠けている。
犯人が取った行動が父親の行動を英雄視する息子や同調者に引き継がれないことを祈る。
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