チョコレートと猫

ゴールデンカムイのチョコレートと猫のレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
4.0
原作マンガがとても大好きで、
マンガの実写化には基本反対の人間だけれど、
事前に見かけたキービジュやPVを観て、なんとなく大丈夫そうだと思ったので観てきた。
まだ見てない人は、エンドロールが終わっても席を立たずにそのまま観て欲しいと思う。





以下、ネタバレ含む。

原作マンガと実写俳優のキャラのビジュアル等に関しては、強烈な拒絶や違和感は特になく、なるべく寄せてくれているのが分かってその時点で好感を持った。
メイクとはいえ尾形の顔の人間っているんだ…や、
白石っているんだ…と思えるほど、
キャストが寄せてくれていてよかった。

だが、キャストの演技(表情や感情のトーン)に、ちょこちょこそれはこのキャラではそうでないのでは?大げさすぎる気がする…逆におとなしすぎる…や、カメラワークに対してこのシーンは原作マンガの通りにこっちの角度から見たかった等々、不満まではいかないまでも何かと思う所は色々あった。
特に、アイヌだということに対して白石に馬鹿にされても平然としている風なアシリパに「なれる必要なんてない」と怒る杉元のシーンは、もうちょっと印象に残るように尺も間も欲しかったと思った。なんだったらそのシーンだけ怒っている杉元の顔と、それを聞いた上でリアクションを起こしてるアシリパの顔のそれぞれのアップがあってもよかったのでは?と思ってしまったほど、するっと流されてしまって少しかなしかった。
(相棒になる2人の絆を築いていく上で重要なやりとりだと思うので)

原作マンガ自体が流血シーンがあったりして、実写になるとグロいところもあるんだろうなと多少は覚悟していたが、やっぱり実写になるとリアルにより感じられて、何度か目を薄めてしまったシーンがあるので、流血やグロテスクなものが苦手な人は注意した方が良いかもしれない。

グロさはあったものの、熊穴から見る外で繰り広げられる戦闘シーンは、想像が掻き立てられるような演出になっていて見せ方が上手いなと唸ってしまった。このシーンは他とちょっと違った印象を受けて面白かった。

ゴールデンカムイはコメディ部分も結構はっちゃけているので、
その部分だけをピックアップして、シリアスがおざなりになったら嫌だなとずっと思っていたのだが、
どちらかというとシリアスの方を重点的に描いてくれていて、重厚なストーリー展開をしてくれていたのがとてもうれしかった。

それはそれとして、キャラの顔芸ともいえる、表情筋を豊かに使って顔で表現するのも魅力の一つではあるので、どこまでどうやって表現するんだろうと不安だったが(やりすぎると大げさでチープだし、変なエフェクトでギャグ映画みたいに加工されたらめちゃくちゃ嫌だし、いくらそれがウケている層が居るとはいえそればっかり取り上げられてやらされてるのを見ると嫌悪感を持つかもしれないという不安)、
アシㇼパの杉元のオソマに対する数々のリアクションが、漫画でみた表現の枠を悪く超えることなく、観たいままに演じてくれていたのが大変良かったし、あの顔の表現をここまで寄せてくれるのか…とキャストさんに感心してしまった。一歩間違えれば汚く映ってしまう危険もあったが、やりすぎたり尺を取り過ぎて下品にならず、絶妙な表情と間で表現してくれたおかげで、楽しく見れたのでその点にとてもとても感謝している。
アシㇼパは確かに顔芸で楽しませてくれるかもしれないが、やっぱり本作の美少女でもあるので、その美しさを損なわずに演じてくれたのが何よりもうれしいと思う。
アシㇼパさんがこのキャストさんでよかったと、その時改めて強く思った。

史実の土方歳三が生涯好きな人間で、
創作物に出てくる土方歳三、あるいはそのモチーフのキャラクターを大体好きになる人間であるせいか、
リアルの人間が演じる土方歳三が受け付けないことが多く、観ない選択をするのが殆どなのだが、今作の土方さんはとてもカッコよく、もし次作があるなら是非とも観たいと思ったくらい良かった。
ライフル銃や、愛刀・和泉守兼定を振り回して大立回りする土方歳三が格好良すぎて大変痺れた。
私が見たい格好良い土方歳三だった。

今作のMVPは何よりも馬。
馬の大活躍が大きなスクリーンで観れたおかげで大迫力だったし、馬が爆走するシーンは手に汗握るアクションシーンでもあり大変面白く、お馬さんがんばれ!といつの間にか馬を心の中で夢中になって応援してしまったほど、馬のシーンがとても良かった。
エンドロールで動物に危害を加えてませんの注意書きがあったのもよかった。よかった、かわいそうな馬は居なかった。

ゴールデンカムイには、囚人側にも魅力的なキャラクターがたくさんでてくるので、それを次作があったら出てくるかもしれないと匂わせる終わり方に、とても興奮してしまったし、なにより作中で美女と言われた家永のビジュアル大変美しくて満足した。
次作があったら是非観たいし、是非家永が出るまで続けて欲しいと思ってしまったくらい良かった。

色々と思う所はありつつも、観終わった後に、もう終わったの?ここで終わり?とちょっと肩透かしを食らったほど集中して観ていたので、総じての感想は良かったと感じた。
観たかったシーンがエンドロール後に来たのでフォローがあってとてもよかった。最後まで席を立たずに観た方が良い。


個人的にせっかくのIMAXで高い料金払って観たのに、前列の客層が悪かったせいで作品に集中できない部分もあって作中で怒る杉元と感情が同調する部分があるほど怒りの感情で観てしまったので、もうちょっと閑散期になって、客入りが少なくなった頃を見繕ってもう一度集中して観れる環境で観たいと思った。
非常識客にファーストインパクトを邪魔されて大変不快だったので、それを払拭するリベンジ鑑賞がしたいと思わせてくれたくらいにはいい出来の映画だと思う。