しばいぬたろう

クリスタル殺人事件のしばいぬたろうのネタバレレビュー・内容・結末

クリスタル殺人事件(1980年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

『クリスタル殺人事件』('80)
The Mirror Crack'd / イギリス / 英語

ロンドン郊外の小さな町に住む老婦人ミス・マープルは、鋭い洞察力と推理力を持っており、ミステリー映画も途中で犯人を当てることができる。
ある日、大女優マリーナと有名監督が町を訪問するということで、町をあげて歓迎パーティを開催することになった。
ミス・マープルも会場入りするが、足に怪我を負い、先に会場を後にする。
そこにプロデューサーとその妻で女優のローラが、会場を訪れる。
マリーナとローラは犬猿の仲で有名で、二人の間に火花が散っていた。
 
会場でずっとマリーナに話しかけていたヘザー・バブコックが、監督特製のダイキリを飲んだ後で亡くなったことで事態は一変し、映画撮影は進むもマリーナは精神的に追い詰められていくように。
ロンドン警視庁に勤めるミス・マープルの甥も捜査にあたる中、ミス・マープルは会場で給仕をしていた家政婦の話を聞きいて、事件の謎を解いていく。


テーマ曲が良かった。
物語の終わり方的には明るすぎる曲になっているかもしれないが、イギリスの田舎町の風景に合っている。
 
アガサ・クリスティの原作は未読だが、個人的にはポアロシリーズよりは楽しめた。
ミス・マープルは推理に対してかなり自信があるようで、彼女の真相披露はポアロに通じるものがある。
しかし、安楽椅子探偵であるため、登場している時間が短いことが印象的だ。
ポアロのような尊大さはないため、彼女の方が好印象。
想像通りのイギリスのご婦人だ。
 
ミス・マープルを演じたのは、『ガス燈』で衝撃デビューしたアンジェラ・ラズベリーだ。
もしかすると、アニメ映画の『美女と野獣』(1991)のポット夫人の声を担当した方で有名かもしれない。
本作のミス・マープルの好奇心旺盛でありながら厳格な性格で、それがコロコロ表情に現れていて、とても良かったと思うし、彼女以外のミス・マープルが想像つかない。
 
本作で一番印象的だったのは、やはりエリザベス・テイラーでしょう。
情緒不安定でありながら、女優として復帰しようとする女優の演技がとても素晴らしかった。
目が印象的な女優であるため、やはり表情が良いのだ。

また、キム・ノヴァクもかなり印象的で、当時47歳であるわけだが30代に見えた。
我儘で空気の読めない嫌われるタイプの役を、振り切った演技でとても良かった。
嫌いなタイプの役なのに、彼女が演じたことで、嫌いになれないノリの良さを感じた。

冒頭の映画のシーンの犯人の女性も、印象に残りやすいお顔でした。
端役のピアース・ブロスナンには、絶対に気が付かない。
初見時にまじまじと顔を見たのにわからなかった。
 
展開もテンポ良くスピーディで、後出しじゃんけんの無いしっかりとしたミステリーに仕上がっていた。
無理やりな設定もないので良かったのだが、第二の被害者を殺した動機と犯人が結局わからなかった。
 
ミス・マープルというよりも、「女優の生き様」という主題で、原作を含め、タイトルが自分には難し過ぎた。
映画の邦題である「クリスタル殺人事件」の由来もわからないし、小説のタイトルが合っていたので、古い映画にしては珍しく邦題失敗作品だと思う。

個人的には、1950年代のイギリス田舎町の雰囲気が良かったので、その点だけでも本作を観る価値は十分にあると思います。


【ジャンル】探偵映画
【要素】ミス・マープル、アガサ・クリスティ作品、安楽椅子探偵
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