りっく

1秒先の彼のりっくのレビュー・感想・評価

1秒先の彼(2023年製作の映画)
3.2
人よりも先に行動してしまう男性と、人よりも遅れて行動してしまう女性が、ある数日の出来事をそれぞれの視点から物語ることで観客は互いの接点や想いを知り、そして時を経て印象的な名前を呼ぶ=互いの正体を認識することで何かが成就する余韻を残す。

2人の時間が異なることは、例えばスクーターや電動キックボードに乗る岡田将生の非現実的な滑らかな横移動や、時が止まり人間が書割りのようになった世界での清原果耶のヨロヨロとした動きに集約される。世間から何処か浮いてしまっていることを、SF的な設定とあわせて飲み込みやすい演出が施されている。

人によって時間を先回りできる人間もいれば、時間についていけない人間もいる。それを物理的な形ではなく、世間についていけず、自らの意志で時間から足を踏み外す選択をする失踪した父親の存在もまた、時間に縛られながら生きるしかない人間の宿命を描き出すことで、普遍性を獲得している。

ただ、オリジナル版から男女の役割を入れ替える配慮はありつつも、もはやパネル化してしまった無抵抗・無防備な岡田将生を連れ回して写真を撮る清原果耶の行動は、一歩間違えれば受け入れがたい。SF的設定を生かすことがまず先にあり、そのためにまどろっこしく生理的に受け付けない方法を取ったように見えてしまう。
りっく

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