ゴトウ

1秒先の彼のゴトウのレビュー・感想・評価

1秒先の彼(2023年製作の映画)
3.0
オリジナル版が思い出の中で美化されすぎてつい比べてしまった。男女逆にするのは別に良いと思うけれど、なんでレイカを「7回生の大学生」みたいな設定にしたのだろうか。天涯孤独でバイトを掛け持ちして学費を払いながら留年し続け、大学内の部室に住んでいる(ロケ地は立命館)みたいなキャラクターは、ただでさえ時間停止が発生する突飛な設定に上乗せするには説明不足すぎる。正直ノイズに感じた。2024年時点でも実年齢22歳の清原果耶に、25歳前後の留年大学生を演じさせるのもややこしい。清原がどう見ても幼い(なんなら女子高生とかの役の方がしっくりくる)ので、岡田将生演じるハジメに対してあまりに歳の差があるように見える。桜子も女子大生という設定なので、どうしてもロリコンっぽく見えてしまってこれもよろしくない。普通に同年代くらいの設定じゃダメなのかね。

ロケ地が京都、言ったら森見登美彦的な、なにか不思議なことが起きそうな場所ということなのかね。「中賀茂」なる架空地名が出てきたり、京都市内↔︎宇治市↔︎天橋立の高速移動があったり、イマジナリー京都ではある。知ってる場所がたくさん出てきてテンションは上がる。京都市内爆走loopとか、バスに自意識の強い大学生がいっぱい乗ってるとか、変なところの解像度が高くて笑ってしまった。しかし桜子の「すでにデビューも決まっているような学生シンガーソングライターなのに、美人局やロマンス詐欺で金を稼いでいる」という設定はいくらなんでもおかしすぎる。どこの事務所がそんな脇の甘いチンピラを囲うんだ。歌ってるのがご当地歌謡なのも含めてこの辺の設定がよくわからなすぎる。なんだかいろんな大人の都合でねじ込まれた要素があるような気がするぞ。なぜかキャストにしみけんがいるのも含め。そういうのが透けるせいで全体の印象がギクシャクするのはマイナス。

さすがにもうちょっと私書箱のネタバラシとかは丁寧にされていたような記憶なので、リメイク版だとレイカと再会したハジメが泣くのはあんまり説得力がないようにも感じた。思うにそこまでのハジメは偏屈さや口の悪さが目立ってしまって、根の優しさとかを感じられなかったせいかもしれない。クドカン節みたいなのも薄い気がして、改変と新たにねじ込んだ要素とが上手く噛み合っていない印象。思い入れが強すぎて緊張するけど、オリジナル版も見返してみるか……。

片割れが京大中退芸人、たらちねの出演も要チェック。
ゴトウ

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