ゴトウ

オールド・ジョイのゴトウのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
3.5
とにかくやるせない。長さ見て短いなと思ったけど、こんなの2時間とか観てたら苦しすぎるかもしれない。旧友と過ごす時間、会話は全然噛み合わず、ケンカするわけではないが楽しい時間を過ごせているわけでもない。マークが妻に連絡を入れるために席を外すたび、カートはもう昔のようにはいられないことを突きつけられる。「パズドラしかできないんだよ」系というのか、もう宇宙の話やデジャブの話で盛り上がれなくなってしまった友達と、それでもなんとか距離を縮めようとしたくなってしまうカートの方に気持ちを寄せすぎてしまって辛かった。美しい風景や動物、街並みのインサートが、かえって自然の中に行こうが休まらない気持ち、車に乗ってもどこへも行けない現実を際立たせてしまう

自転車でニアミスしてしまったおじいさんになんか言われて、「嫌われたかも」と罪悪感を覚えてしまうマークの話、さらっと入ってきたのにあまりに共感できすぎてグロテスクだった。この種のナーバスさは生きるうえでは枷になりやすいだろうし、ラストシーンの切なさも胸に残る。善意なのか罪悪感からの逃避なのかわからないけれど、あれをやっても少しも心が晴れないんだろうな。使い古された思い出話、今はもうないお店、変わってしまった友達……「悲しみは使い古された喜び(old joy)」という話が出て(カートには聞き流されて)以降、切なさが一段と重くなる。カーラジオから流れてくる政治の話と、友達が語り続ける思い出と、家で待つ妻や仕事の話と、どこにも軸足が置けないような孤独感。どれもに触れているのに、触れただけ遠ざかっていくような不安が何をしても拭えない……。全員強烈に寂しそうな顔をしているのが印象的で、映画の中で下手に人が死ぬよりよほど暗い気持ちになった。マッサージの場面は性的なニュアンスを読み取っている人もいるみたいですが、奉仕する(ご機嫌をとる)ことになっている時点でかつてのような友情が成立していないという話なのかなと思いました。

音楽はヨラテンゴで、軽やかなほどやはり哀しさが際立つ…。
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