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ウィキッド ふたりの魔女のSomeTomoのレビュー・感想・評価

ウィキッド ふたりの魔女(2024年製作の映画)
5.0
今まで見たミュージカル映画の中で圧倒的!常識を超えたミュージカル映画。

まず、これだけはいいたい。
ぜひ映画館で見れるうちに見てほしい!!

本作は「オズの魔法使い」に出てくる悪い魔女と善い魔女は実は昔友人だった⁉︎って話。

冒頭、善い魔女のグリンダは悪い魔女のエルファバを倒し、平和をもたらしたとお祝いムードから始まる。ただそこで実は昔2人は友達だったことが明かされる。

人気者と嫌われ者、真逆の2人の女性がお互いに反発し合い、そして友情を深めていく姿が軸ではあるが、さらにそこに差別や正義、歴史に対する批判など今も社会問題となっているさまざまテーマが描かれている。

ただ、多様性をとりあえずねじ込みました。みたな作品ではない。

本作は『グランドイリュージョン』『クレイジーリッチ』『インザハイツ』を制作されたジョン・M・チュウが監督を務める。

ウィキッドの原作は1995年に発表された小説。そして、2003年にブロードウェイ、2007年からは日本では劇団四季で演じされ、今続くほど人気な舞台である。実は2004年に映画化の話が出たけど、いろいろから先送りにされたらしい。

昨今、原作者や原案者が監修やプロデューサーとして制作に入ることで、原作ファンにも寄り添った作品になる傾向が多いと思う。
(たまに名前だけの場合もありそうやけど)

本作も元の舞台をプロデュースしているマーク・プラットが映画版にも制作としてガッツリ加わっている。
(ジョン・M・チュウは元々舞台のファンらしい。)

それにより、いかに舞台の内容を映像に、だけでなく舞台で表現できないもへ挑戦することができたのだと思う。

あと、何といってもキャスト陣の力が恐ろしかった。ミュージカルとは当たり前やけど、歌と演技が同じくらいの求められる。
しかも、本作はファンタジー要素があるためウィキッドではさらに奇妙さまでも必要になるなか、主演となるシンシア・エリヴァとアリアナ・グランデは見事に演じきっていた。

舞台の「カラーパープル」や映画「ハリエット」
など過去にアカデミー賞の主演女優賞や歌曲賞にもノミネート経験があるまさに、歌と演技ができるシンシア・エリヴァ。

世界的に歌姫であり、映画「ドント・ルック・アップ」にも出演していたアリアナ・グランデ。

録音ではなく、現場での歌唱でお互いに戦おうとした姿により、この力強い作品になったのかもしれない。

通常ミュージカルはおどりながら、演技しながら歌うことが多いため、録音された歌が使われることが多い。
しかし、本作では実際に踊りながら、そしてラストの「Deflying Gravity」では宙に浮きながら歌った音を実際に使っている。

宙に浮きながらあと歌声が出せるって、まさに人間業を超えた能力を発揮していると言わざるおえない。

監督はインタビューでシンシア・エリヴァの「Defying Gravity」屋根が吹き飛ぶかと思ったと言っていたが、自分も映画館が吹き飛ばされるのかと思うくらいの衝撃を受けた。

あと、他のミュージカル作品とことなり、複数人で、歌うシーンがウィキッドは少ない印象を受ける。
キャラクターに絞ることで、よりその人物の心や感情、個性を表現していた気がする。

例えば、グリンダであれば「Popular」
グリンダの人柄も実は良いとおちゃめ感が発揮されていた。
まさにグリンダの人柄が象徴されるシーンやけど、これほどアリアナ・グランデがハマっているとは思わなかった。
一回聞くと中毒になってしまう、まさに人気者に惹きつけられるような感覚に陥ってしまった。

人気者の嫌なやつ方と思いきや、根っからの自己肯定感が高いだけで実は優しく思いやりがある。ただ、キャラとして分かっていてもハナにつく、嫌味にうつるやすい役でもある中、アリアナ・グランデはそれを見事に演じていた。


そして、何といってもパート1の最終幕となる「Defying Gravity」。

エルファバ演じるシンシア・エリヴァの圧倒的な心情を表していた。
グリンダとエルファバそれぞれに相手を思いやりながら、離れてしまう。

エルファバの大きな権力に対して、孤立しながら、絶対に困難な道と分かりながらも、自分の正義を貫こうとする姿にこれほどまでに受けたことのない勇気をもらえた。

歌とキャストはもちろんやけど、映像のポイントとなるセットもかなり魅力的。
・オープニング出てくるチューリップ畑はCGではなく作り出した。花が咲く時期も異なるにも関わらず、全てが同じタイミングで咲くよう植えたらしい

・「Dancing thorough Life」のシーンに出てくる回転する本棚もCGではなく、実際に作り出したセットとなる。
(本を踏みつけるあたりは、流石に驚いたけど)

パート1の出会い、反発、友情、そして別れから繋がる考えるだけで辛くなるパート2。
パート2への繋げ方、期待させ方を含めてこれほど見事な2部作の前半を見たことない。

おそらく、オズの魔法使いに関わった人たちや舞台ウィキッドに関わった人たち、全スタッフと全キャストの熱量によって生み出された作品なんだと思う。

愛、友情、反発、善、悪、正義など複雑な人間らしさを最高のキャストと最高の歌、最高の映像で、最高の熱量で表現したウィキッドをぜひ映画館で見てほしい。



そして、この映画が好きな人にはパンフレットがかなりおすすめ!
なぜこんなに素晴らしい作品になったのか熱量が伝わる内容でパンフレットも最高だった。
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