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唄う六人の女のnetfilmsのレビュー・感想・評価

唄う六人の女(2023年製作の映画)
3.6
 森の中の崖スレスレのオンボロ道を宇和島(山田孝之)が疾走する辺りはかなりの期待を抱かせたのだが、う〜んこれはあれこれ詰め込み過ぎたか。『唄う六人の女』のタイトルに私は『黒い十人の女』のような現代的寓話を思い出したのだが、登場する6人の女性たちはまったく言葉を発しようとしない。40年以上疎遠になっていたという萱島(竹野内豊)の父親も最初から何だか私には悪い人物に思えず、脚本の練りが甘い。そもそも父親役の俳優には申し訳ないのだが、今作にはもっと重要な俳優を当てるべきではないか。一方で女性たちに固有の名前が与えられず、「⚪︎⚪︎の女」となっている辺りが非常に象徴的で、そもそも彼女たちは宇和島や萱島と言葉による綿密なコミュニケーションを取ろうとしない。

 45歳になるのにいまだ独身のモテ男で、束縛タイプの彼女に圧強めで言い寄られる辺りは竹野内豊の素にも見えるし、実際に彼がプレイボーイだった父親の謎に迫るうちに、森に纏わる不条理劇に巻き込まれて行く。宇和島と萱島の対照的な関係性も肝で、彼らが「⚪︎⚪︎の女」に触媒として与える行為が大きな波紋を呼ぶ。一向に地上の世界へと辿り着かない「迷いの森」も不気味だが、俯瞰で見た森の情景は圧巻だ。然し乍ら生殖本能を有さない自然の摂理を見せられた時点で我々はどのような考えを持てば良いのか?中盤以降、苛立ちがMAXになった宇和島の蹂躙ぶりは名優・山田孝之の真骨頂でまぁ凄まじい。だがその段階になっても6人で蜂起しようとしない6人の女の繋がりが妙で、最終的な着地点も随分ありふれていると言えばそれまでだ。ところでタイトルの『唄う六人の女』の唄うとは何だったのだろうか?
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