2023年上半期に観た作品の中でベスト3に入る、とてつもなく刺さった作品。
本国でベストセラーとなった小説が原作だけれど、未読。
都会で育ったピエトロと、子どもの頃から山の中で育ち自然の中で生きるブルーノ。
幼い頃に出会い友情を育んだ2人のその後の交流と人生を描くストーリー。
ルカ・マリネッリ（ピエトロ役）の出演作品ということでチェックしていたイタリア映画。
ピエトロとブルーノの、生き方がまるで違うのに変わらず友情を育みともに支え合い、お互いのことを誰よりも理解し合う2人の姿がとにかく良かった。
都会に生きるサラリーマンなのに休日は山に行きたがる父と、そんな父の生き方にティーンの頃は反発し、距離を置いたピエトロ。
父の死後、ブルーノがむしろ自分以上に父に寄り添っていたことを知るわけだけれど。
ピエトロがブルーノに嫉妬してもいい設定のはずなのに、あくまでも淡々と友情ストーリーとして描いているところが好き。
山の映像の美しさも素晴らしく、山頂で名前を呼ぶシーンはグッときた。
親友2人の姿を描くと同時に、父子の映画である点も好き。
ピエトロが父と離れていた間、ブルーノがピエトロの父と寄り添いともに山歩きをし、その足跡を辿ることで父との思い出を間接的に共有するピエトロの姿には涙した。
自身の生き方を貫くブルーノと、それを理解できる親友ピエトロ、そしてそれぞれの立場で人生の浮き沈みを経験する2人が迎える結末は、何とも切ない…。
今作、邦題がなかなか上手い。
世界各地の山脈を巡ってもなお忘れられない、自分にとって唯一無二の山こそ、「帰れない山」なのだと思う。
