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帰れない山の一人旅のレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
4.0
第75回カンヌ国際映画祭審査員賞。
フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ監督作。

イタリアの作家パオロ・コニェッティによる2017年発表の長編処女作「帰れない山」をフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンとシャルロッテ・ファンデルメールシュが共同で映像化した人間ドラマの力作で、山に魅了された二人の男の半生を雄大な自然美を背景に映し出しています。

北イタリアのモンテ・ローザ山麓の小村における同年齢の二人の男の長年の親交とそれぞれの生き様を描いた“山岳+人間ドラマ”の力作となっています。生まれた時から同じ山で暮らしてきた野性的な牛飼いの男ブルーノと、普段は都会暮らしで1年の中の限られた期間だけ両親と山で過ごす生活を送るピエトロという二人の男の出逢いと友情を、無邪気な少年期と15年の空白期間を経た青年期の葛藤という二つの大きな時間軸の中に描いて、山に対する両者の対照的な向き合い方と生き様を映し出しています。

山の標高差が強調されるスタンダードサイズの画面も手伝って、北イタリア&ヒマラヤの雄大な山岳風景に息を呑む作品となっています。人間を圧倒する大自然という不動の存在を中心にして、山に魅了され、取り憑かれていく男たちの対照的な生き方を二人の物静かな友情とその終焉を軸に見せていく骨太な人間ドラマで、須弥山と8つの山を巡る対話や鳥葬の再現など示唆に富んだ演出の繊細性も見事な力作です。
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