Jun潤

ナワリヌイのJun潤のレビュー・感想・評価

ナワリヌイ(2022年製作の映画)
3.8
ナワリヌイ ☆3.8

2022.06.17

最近個人的に激アツなドキュメンタリー作品鑑賞の流れを受けて。

“反体制のカリスマ”と呼ばれるロシア人政治活動家のアレクセイ・ナワリヌイ。
国民の支持を集め、プーチン批判を始めとした様々な活動を行っていたが、2020年8月20日、トムスクからモスクワへ向かう旅客機の搭乗中、原因不明の体調不良に陥り、急遽入院、生命の危機に瀕する。
一命を取り留めたナワリヌイと彼が独自に結成した調査チームは、ロシア国内の病院の対応などから、プーチンによる暗殺の線で調査を開始する。

「事実は小説よりも奇なり」、いや「奇なり」にもほどがあるでしょうよ。

“プーチンが最も恐れる男”と称されるナワリヌイが、現在のウクライナ侵攻におけるプーチンの政治について語る内容なのかと思いきや、フィクションのスパイ×ミステリーの流れを汲みながら、フィクションの枠を軽く飛び越える衝撃の事実の数々。
フィクションのように劇的でドラマチックな事件の顛末に加え、フィクションであって欲しいとまで願わせる、国の横暴、それ以上の暴走とも言える異常な行動。
シリアスに笑えるけどよくよく考えると笑えねぇよ…。

ナワリヌイの行動や犠牲の先に国民が行動を起こす結末があり、そのさらに先には国民一人一人の正義があっても覆らない戦争という最悪の状況。
政治的、大局的な見地で見ても異様な光景が作中で垣間見れますが、やはりその視線の先にはナワリヌイの子供達や、平和を望む大多数の国民の命や生活があるわけで。
それを奪う権利、それを損なってまで得られる利益が果たして今の政治の先にあるのか。

殊更ロシアの現状を切り取った作品ではありましたが、今の日本に通じるところもやはりあります。
「悪が勝つのは正義が戦っていないから。」
むむ、耳が痛いです…。
正義と悪はどこにあるのか、それはおそらく、想像よりも単純で、想像よりも夥しい…。
Jun潤

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