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ウエスト・サイド物語のbibooのネタバレレビュー・内容・結末

ウエスト・サイド物語(1961年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ミュージカルの金字塔と言われてる所以がすごくわかったというか、こだわるあまり途中降板させられたジェロームの手仕事が伝わってくる細かい振り付けで、仕草とかリアクションにまで振り付けられてたりするので終始ミュージカル舞台を見ているみたい。
だからといってミュージカルに徹しているわけじゃなく、序盤のジェッツがシャークスにイチャモンつけながら街中で踊るシーンで建物の影からダンサーたちを撮るカメラワークとかかっこいい。
美術賞&衣装デザイン賞を取っているスタイリングも面白く、全編通して赤が効果的に使われていて、最後にマリアが着ている真っ赤なドレスとパトカーのサイレンの色がシンクロしているのとかこじつけを探せばいっぱい出てきそう。ジェッツが青黄色白ベースの衣装で、シャークスが赤紫黒ベースの衣装だったり、肌の色とコーディネートしているのかなと思ったり。

音楽に関しては、「クインテット」の五重奏で歌うシーンが圧巻で大好きなんだけど、「トゥナイト」のリミックス的な感じかと思ったら、トゥナイトを二重奏で歌うことを予定した上で先にクインテットを作り、この曲の一番綺麗なメロディを引き抜いてトゥナイトを作ったというエピソードも面白い。
個人的に劇中曲で一番好きなのは「アメリカ」なんだか、理想と現実をうまく韻を踏みながら男女で交互に掛け合う歌詞が素晴らしすぎる。
とか、もろもろの音楽のアイデアと賢く細かく丁寧に練られた構成が、知れば知るほど面白く画期的な作品だということがわかった。

2021年版のメイキングブック内のインタビューで、リフ役のラス・タンブリンが振付師のジェロームがクビになりアクション指導が振り付けにアレンジを加えて予定になかったアクロバットをさせられたって言ってて、劇中何度かバク宙とか鉄棒使って動いたりしてるんだけど、予定になかったと感じさせないくらいの見事な身体能力だったし、リタモレノもオーディションではダンスに自信なかったとか言ってたけどそんなことをモノとも感じさせない演技だった。

あと今作はスピルバーグ版と違うアレンジのクライマックスの脚本が特に好きだった。ドクが言った「目を覚ませ!こんな道しかないのか。熱くなって破裂してしまう。なぜ戦争をやめんのだ。なぜ殺すんだ…」ってセリフとか、マリアによる「トニーやリフやレオナルドを殺したのは銃じゃない、あんたたちの憎しみが殺したのよ」っていうセリフとか、”自覚”というものがこちらの胸にまで迫ってきて泣ける。

なんにせよ、俳優たちをファンデーションで褐色にさせてたのとかキャラクターのルーツと違う人たちが演じてるとかそういう引っ掛かりはあるけど、とにかくこの映画を見ると圧倒的に「平等」という言葉が脳に湧いてくる。それは今作のメインの製作陣4人がマイノリティだったから、彼らの情熱が素晴らしい構成から伝わってきたからなのかもしれない。
新旧映画版では原作からカットされてるシーンもあるそうなので、ブロードウェイミュージカル版がいつか死ぬまでに見てみたい。

ー「No left turn.No right turn. Keep right of the street.(左に曲がるな。右に曲がるな。道の正しい側を歩け。)」
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