蓮乃

窓辺にての蓮乃のネタバレレビュー・内容・結末

窓辺にて(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

市川、お前は妖精さんか?という感想。
フワフワして、誰にも捕まらなさそうなのに無駄に付き合いがいい。皆、なんだかんだと妖精さんに本音を吐露している、別に解決するわけでも良いこと言ってくれるわけでもないのに。
そんな稀有な妖精さんの唯一無二の人なのに、その実感がなさすぎたのか、妻がどっぷり浮気しているが、妻サイドにどうしても同情しちゃう。妖精さん捕まえた実感がなさすぎたんじゃないかな?そんな時に生身!って感じの恋愛感情ぶつけてくれる男の人に出会ったら、すがっちゃう気わかるよ、って言いたくなる。妖精さんごめんなさい。
「許せないから別れよう」最高に重い言葉のはずなのに、たまげるほど実体がなくて上っ面にしか聞こえないもんだから、2フレで妻に叩き潰されてて笑う。この言葉をここまで軽ーくしてしまう妖精市川こと稲垣吾郎すごいよ。
そのくせ市役所で「書き損じとかあるかもだから2枚」と離婚届を欲する言葉がめちゃくちゃ生身で、いや生身になるのそこじゃない、ってまた笑う。

天才高校生作家の隠しきれない神経質さと生意気さも、受け流してるように見えて友人関係が成立していく。子供扱いしてない、と見る人もいるだろうが、市川はるあをちゃんと子供扱いしてるからこそ友人でいるし、おじからも信用されちゃったと思う。子供を子供として扱えない大人が多い中で、るあは頭いいからこの人はちゃんと自分をまだ子供でいさせてくれる、って安心感を市川おじさんに感じたんだと思ってる。

そんな妖精おじさんが、妻の不倫相手と対峙する時は、ちゃんと怒ってる顔してるのが胸アツポイントだし。そもそも妻との会話で、「僕には必要のない本」なんていう荒っぽい感想からの不倫知ってるかんな発言までの流れも、ちゃんと怒ってるからこそ、だよと。お前ちゃんと怒ってるじゃん、って本人に言いたくなる。
(不倫相手のことを相談する妻)と(不倫相手のことを相談されてる自分)な状況への怒りがちゃんとあったよ。すぐにまたフワフワしだしたけど、それは相手が熱くなると逆に冷えていく性質なんじゃないかな、市川さんて。その気持ちわかるじゃん。そして、それが相手をさみしくさせるんだろう、でも、市川さんも大概傷ついてるのが切ない、だって本当は妖精じゃないんだし。

妻の食べるおにぎりの味とか、マサの奥さんとか、マサには悪いけどそのうち地獄見そうな気配、とか、言い出したらキリないけど、最後に、やっと喋った子供の声が予想外に低すぎてびびった。
登場人物一人残らず、みんな幸せでいてくれるといいな。私は幸せな時間を過ごせました。
蓮乃

蓮乃