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劇場版 荒野に希望の灯をともすのnobsangのレビュー・感想・評価

3.9
一言で言えばドキュメント映像ですが、90分の映画としても楽しめる内容だったと感じます。気構えず、ふつうに映画を見る気持ちで触れてみることをオススメします。

正直、いち個人の「魂の葛藤・衝動のドラマ」以上でも以下でもない。…のですが、だからこそ、観ていられる映像と展開なのですよ。
正義やら平和がどうのとか、支援者の存在とか、そんな綺麗事を特に織り交ぜることなく、眼の前のことに我慢がならなかった、目をそらすことが出来なかった、そんな中村哲さんという人のものがたり。

正直、内容が骨太…というかスーパーヘビーでありながら、「ものがたり」があるので、ちゃんと映画になっちゃうんですよ。
医療への違和感、半ば趣味で参加した海外遠征、目の当たりにした現実、そこから目をそらすことが出来なかった自分。そこにドラマがある。
やるべきことを見つけてしまい、それに真摯に取り組み、干ばつで死んだ高野を田園風景へと再生した功績。
そこに妙な演出や綺麗事をつけてしまうと、逆に観ていられないものになるでしょう。

石橋蓮司さんと中里雅子さんの落ち着いたナレーションが、一個人のチャレンジの話を、ちゃんと映像作品として導いてくれているようにも感じました。


逆説的には、映画に異世界性やカタルシスを求める人にとっては、「なんでこれをわざわざ映画で見なあかんねん」と突っ込みたくなるくらい、純度100%の人間ドキュメントである、ともいえます。コンセプトとしてのエンタテイメント性はゼロ。(マイナスとは言いません、楽しもうと思えば楽しめる。)

 
中村氏の主張や思想にマッチする人にとっては、その言葉ひとつひとつも刺さるものとなっているのでしょう。
わたし自身は、「偉人のおはなし映画」として楽しめた。思想や主張にすべて賛同できるものではない。という立ち位置ですが…
まあ…これ、別に教材じゃないですから。こっちは「映画を一本観ただけ」なんで。はい。
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