九月

ザ・メニューの九月のレビュー・感想・評価

ザ・メニュー(2022年製作の映画)
4.5
アニャ・テイラー=ジョイとニコラス・ホルトの共演、と知った時からそれだけで楽しみにしていたこの作品。あらすじやトレーラーを見た時に想像していたストーリーとは一味も二味も違い、実際に観ている最中も印象が変わり続け、最後まで物語の着地点が分からなくて驚いた。

綺麗すぎる映像は何故かそんなに好きになれなかったけれど、だんだん増していく不穏さにとても引き込まれた。
最初はタイラーと同じように目を輝かせながら運ばれてくる料理を眺めていたのに、途中から、もう次の料理を持ってこないで…と思ってしまうほどに没入。
まさに最後の晩餐のような、ありえないシチュエーションながら、自分があの場に居合わせたらどうするか?を何度も考えてしまった。
交渉を試みるのか、強行手段に出るのか、ただ諦めの境地で成り行きを見ているだけなのか、機転を利かせられるのか…

登場人物のほぼ全員が、こうはなりたくないがもしかしたら自分や周りの誰かも…というキャラクターばかり。
特にタイラーの美食家(気取り)加減、自分のような映画を観る側と通ずるところがあるように思えて、何とも言えない気持ちになる。

さぞ痛快なラストが待っているのだろう、と観る前は期待していたけれど、なんだか身につまされる部分が多く、最後に描かれているものの割には全然解放感も清々しさもなかった。

あのシーンや行動の意味は何だったんだろう?などと疑問に思うところがかなり多かったけれど、こうやって、終わったあとにもあれこれ考えを巡らせて、ドキドキ(ゾクゾク)してしまう作品は好き。
何も食べたくない気持ちになりながらもお腹が空いて、特別食べたかった訳でもないのに、映画館を出て早速近くのハンバーガー店でチーズバーガーを頼んでしまった。

そして胃もたれ。
九月

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