カリスマ料理長が自ら接客する特別なおもてなしと極上な料理で、セレブ垂涎の“美味しさ以上の”お食事体験をお約束する超高級レストラン。コース料理の一つ一つに物語が仕込まれており、新たな料理が出るたびに物語も予測不能な展開を見せます。思わず「A24?」ってなりましたが、先輩格のサーチライト・ピクチャーズ作品でした。
オープンキッチンではジャケ写の中央にいる総料理長(レイフ・ファインズ)が多くの料理人を従え、緊張感と規律が支配する現場を指揮しています。その様子はなんとも小気味よいです(ただ、実際の料理が美味しそうには見えない。意図的な演出?)。
私自身、そんな高級レストランとは縁がありませんが、ラーメン屋ならあります。上から目線の店長や、それを崇め称える客の姿を思い出しながら、本作で味わう絶妙なムカムーカを楽しみました。
物語は、すべてがカリスマ料理長の計画通りに進む……はずでしたが、唯一の誤算は客の1人であるアニャ・テイラー=ジョイ(ジャケ写の左下)の存在。彼女だけが意味なく流されることのない“普通の人”であり、その強さが物語を左右するカギとなります。
ホン・チャオ(ジャケ写の左上)の演技も素晴らしく、『ダウンサイズ』('17)で心を掴まれて以来、いつかメジャーなショーレースで名前が上がる日を楽しみにしています(次は『憐れみの3章』('24)を観てみたい)。そしてニコラス・ホルト(ジャケ写の右下)の登場は嬉しいサプライズでした。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』('15)のウォーボーイズも彼、『女王陛下のお気に入り』('18)のあのくるくるカツラの男も彼だったとは!それにしても本作では、ラーメン屋で隣にいたら胡椒をぶちまけたくなるレベルのグルメオタクっぷりでした(映画オタクならオーケーだぜ)。
結局は、権威や同調圧力に負けないアニャ・テイラー=ジョイが一番素敵でした(ただし、人一倍気が強そう)。