ベルベー

カラオケ行こ!のベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

いやー見当違いだったら申し訳ないけど、これやったな!和山やまと野木亜紀子と山下敦弘の見事な共犯関係。うるせえ奴らにバレないようにコメディにカモフラージュした上で、どこまで未成年男子とアウトロー中年のラブを描けるか。作中芳根京子も言ってたじゃん、「愛」だって。分からん人は見過ごすけど、分かる人には刺さっちゃう記号をあちこちに配置していて膝を打ってしまった。

カラオケを隠れ蓑にしてやろうとしていることはアメリカン・ニューシネマよ。平凡に生きてきた、でも成長期を迎えて自分の変化に葛藤する少年が平凡から脱落した危険なオジサンと出会い、抵抗しつつ絆されつつ距離を縮めていき…この距離の縮め方がラブ。ラブですよ。もどかしくて瑞々しくて、でもヤクザだから普通に怖かったりウザかったりもする。人生が重ならないことが悲しくて腹が立って、「もっと近づきたい」「これ以上近づきたくない」が両立する。

でも主人公は未成年男子なので、世間的に言えばオジサンとのラブはインモラルなのだ。でも「世間的」に中指立てるのがアメリカン・ニューシネマ。「カラオケ行こ!」はヤクザにカラオケを教える中学生というコミカルな設定を持ちながら、うっすら背徳感があるラブを描くことにも挑戦している。そこにセックスはないけど、ラブはある。アメリカン・ニューシネマも結構そういうのある。ブロマンスとの違いというか定義というか…は、とても繊細な話だと思いますが!個人的に「カラオケ行こ!」の2人はラブだと思います。感覚的な話でしかないけど。

で、アメリカン・ニューシネマなら映画の結末は悲劇と相場が決まっており…でもそこまではやらんかと思っていたら、ちゃんと悲劇展開を真剣にやってて感心してしまった。いや結果「死んでないんかーい!」というオチがついてハッピーエンドなんだけどさ。でも聡実が「紅」を叫び唱ったあの瞬間、画面に表現された感情は紛れもない悲しみだから。それこそが重要なのだ。なんなら、ちゃんと煙に巻いてコメディ・ハッピーエンドに着地したことにも好感を抱いた。全部作り手の掌の上だよなあって。真剣に踊らせてくれるのは好き。

キャストの話をすると、まず狂児役に求められるのは「カラオケ行こ!」って言われて本当に嫌だ、本当に怖い、と思わせられるかなわけだが綾野剛、今の芸能界で一番「カラオケ行こ!」って言われたくない俳優なので完璧です。完璧すぎて綾野剛が「カラオケ行こ!」って言ったらそこがピークなのではと危惧したくらいだけど、上に書いた通り良く出来た話だったので要らん心配でした。

聡実役の齋藤潤もとっても良くて、可愛さと生意気さ、もう少しで青年になってしまう今だけの少年らしさが爆発してた。やべきょうすけにブチ切れられて怯えるシーン、悶絶した方は多いのではないでしょうか…腕が!!聡実の後輩と副部長役の子も良かったな…青春でドキドキで…。

あとは善人だけどたいしたことない、たいしたことないけど善人な顧問らしさがキュートな芳根京子、一瞬出てきただけで笑いを取ってく加藤雅也とヒコロヒー、橋本じゅん、やべきょうすけ、吉永秀平、RED RICE、チャンス大城ほか、名曲を見事に台無しにしたヤクザの皆様、満を持して登場する北村一輝、皆輝いてました!
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