牧野

カラオケ行こ!の牧野のネタバレレビュー・内容・結末

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「カラオケ行こ!」とても良かった。
聡実くんの紅は愛の叫びの鎮魂歌だった。震えた。
「愛は与えるものらしいよ」と映画鑑賞部の友達が言っていたけど、聡実くんが中学の三年間(それ以上かも)大切にしてきたソプラノの声、もう終わりが近いとわかっていてそれを最後に与えたいと思ったのが狂児なんだ。これが愛じゃなければなんと呼ぶのか。泣いた。ガラガラになっていく声で、最後まで叫ぶような、狂児への愛だった。ハンカチ握っててよかった。

下手すぎるlemonもよかった。その上で、一瞬の「白日」がくるとは思わなかった。もう戻れないよ、巻き戻せないビデオテープって人生だ。

大人にとっての一ヶ月ってわりと瞬だけど、中学生にとっての一ヶ月って長い。おまけにしんどさを抱えた月日って重くてつらい。聡実くんが狂児と過ごしたのはたった二ヶ月(に満たないかも)だけど、聡実くんが声変わりでしんどい時期に狂児がそばにいてくれたからしんどさをやわらげることができたんだな。最初に「カラオケ行こ!」と言ったのは狂児だけど、聡実くんから伝えた「カラオケ行こ」があってすごくよかった。カラオケ天国の観音開きの扉を押して二人一緒に入るようになったところがよかった。狂児を救うつもりで聡実くんも救われてる。

狂児に買ってもらったビデオデッキ、聡実くんは1000円台とか3000円台のデッキを見てたと思うんだけど、狂児が6000円のデッキ買い与えてるのがよかった。

屋上でのやりとり、刺さっちゃった抜いて?って言った?抜かないんだね。刺さったまんまだよ。一生抜けないよ。狂児が聡実くんを見つめる目が愛だった。愛おしいんだと伝わってくる。リストもらって頭くしゃくしゃするところでもうだめだった。聡実くんの生意気な中学生らしいところも、歌のリスト作ったり紅の和訳する狂児に向ける優しさも全部可愛いくて刺さっちゃったよね。

「俺が見えないのかすぐそばにいるのに」で狂児が扉の外側で聞いているのがすごくよかった。自分のいないところで叫んでくれる愛って本当の気持ちじゃん。狂児の前で歌わなかった聡実くんが狂児の為に歌うなんてもうね。

最初は土砂降りの中びしょ濡れの刺青背負って下向いて歩いてた狂児が、最後は聡実くんと一緒(腕の刺青)に晴れた空を見て歩いてるのがよかった。

帰りにイチゴのショートでも買って帰るつもりだったのに、阪急百貨店で鮭買って帰った。だって愛だったので。
牧野

牧野