カシ

カラオケ行こ!のカシのネタバレレビュー・内容・結末

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ものすごく長文です

まず初めに 綾野剛の足首すごかったです もっと他に言うことあるだろと思うけどすごかったです 脚長いし足首 ほっっっそ

あとさとみくん役齋藤潤くん、撮影時リアル15歳ということで、本当にさとみくんないし齋藤潤くんの15歳の一瞬を切り取ってお出ししてくれた映画なんだな…ってのを4回目の鑑賞で見ててひしひしと感じた
なんか気持ち悪いこと言ってるかもしれんけども 本当あの年齢でこの話を、さとみくんを演じてくれてありがとうだなと思った
聞けば撮影時から6cm背が伸びたそうで、組長からマイクを受け取る際に映るあのふくふくみが残る手も、徐々に大きく筋張ったものに変わっていっているのだろうな…

この映画は(原作も)ある種のヤクザファンタジーですが、実写化することで&大衆の目に触れるにあたり下手したらグルーミングに見えてしまう要素があるから、さとみくん主軸の青春に重点を寄せつつうまいこと原作のそれらしい匂わせ要素を取り払って、その分学校生活を上手く追加してまとめたな〜と感じました

我々は2人の関係性に真摯な気持ちがあると思って見てるわけだし、和山先生もそういうつもりで描かれてるわけじゃないだろうけど、実写化することでリアルに浮き出て見えちゃう部分も絶対あるだろうし 野木さん含め制作サイドの方々は構成をすごい考えたんだろうなあと思います

それらも踏まえてさとみくんの青春映画として非常に上手に原作にない要素が足され、さとみくんの生活に掘り下げがされていたの、本当に脚本が上手いと思った 野木さんありがとうございます

OPの不穏な電子音八分音符で刻まれるラの音(=音叉の音)、映倫のマークがキラリと光るまでは短調かと思わせておいて、画面が明るくなると木管のフニャッとした柔らかい和音を効かせてくるの、うまいな〜〜〜〜〜〜と思いました

ただ1つ危うさを感じたのは、宇宙人のシーンでアタッシュケース後に「何か欲しいもんあるん?買うたるわ」ていうとこ
いや かなり怖ない?私だったらアタッシュケースガツンの後にあのセリフ言われたら泣く 怖くて 
さとみくんの目にはどう映ってたんだろ…て思ったけど最後の紅歌唱シーンの走馬灯(?)で答えがお出しされていて、おっと〜!となった

普通に反社と金銭の授受することは絶対ダメで、本当観客側としては反社こっっっっわってなるシーンとセリフだと感じたけれど、さとみくんにはそう見えちゃってたかあ…という場面でもありました 逃げてー!!!

〜〜〜ここからは好き勝手自分の好きなポイントを話します〜〜〜

大勢のヤクザに囲まれ、ビビり散らかして狂児の腕組んじゃうさとみくんが原作でも可愛くて好きなんですが、映画でも非常に可愛くて大変良かった(上述の理由からカットになるかと思ったけど、なってなくて良かった!)

体感で1/3は綾野剛のカラオケ聞いてる映画だった 原作読んでる時は「始終気持ち悪い裏声」ってどんなだ…?と思ってたけど、映画化されてよくわかりました笑
合唱部の手引きの7箇条?をちゃんと守りながら歌う笑顔の綾野狂児最高でした

原作では見えなかった部分、非常に細かくちゃんと作られている印象で良かった
例えば宇宙人の入墨に色が入ってないのも、途中で破門されちゃったから?と思って見ていた 屋上でのメガネ交換っこも、何も説明ないのにかなり打ち解けてじゃれてる感ある
なんかそういう小道具とか描写が細かいのがありがたい、映像にはない隙間の描写というか

そしてほんと、原作の見た目に全然寄せてないのに、確かに狂児がいた 綾野剛すごい ありがとうございます
あの距離のつめ方と“狂児”感よ!
さとみくん本人も言ってたように3年間頑張ってきた部活や青春、その総まとめである合唱祭=ボーイソプラノとして歌える最後かもしれなかった機会を狂児に全部捧げてしまったさとみくん、漫画では描かれなかったけどカツ子での歌唱を見つめる狂児の姿に、彼がさとみくんにきっと感じていたであろう眩しさとか、畏敬とか、讃仰とか、崇拝とか、そういう気持ちが見えました
そりゃあんなきれいで純な生き物にあんなにも愛の載った歌を泣きながら贈られたら、絆されちゃったのがわかる気がしました

カラオケ天国での練習で紅を歌う時、汗すごいのに、直前の歌歌ってる時は脱いでるのに、ちゃんとジャケットを羽織り直すのも笑った 曲へのリスペクトがすごい 名曲ですもんね

それから映画さとみくん、映画部や両親の焼鮭の皮で「愛とは与えること」を学んださとみくん、「心の瞳で君を見つめれば 愛することそれがどんなことだか分かりかけてきた」さとみくん、その次の行動が「次会った時元気をあげます😊」なのがもうかわいすぎました そんなLINE送ったら可愛がられるに決まってるじゃん!!!

原作ではさとみくんは誰にも狂児のこと相談してる描写ないし、親にも話せない(そりゃそう)だろうけど、映画版では軽い感じで話聞いてくれる・答えてくれる映画部があって本当に良かったと思う
合唱部に行けない時も、ただ何も聞かず受け皿になってくれる場所 中学生には必要だよなと思います
(いや「何も聞かず」ではないな?行かんでええの?は聞かれた そしてさとみくんの回答が「どっち?」なのがな…)

巻き戻らないビデオテープ(おばあちゃんちで見たことあるし!には笑った)も、デッキを買いなおしたけど廃部になるであろう映画部も、さとみくんが欠席した合唱祭も、やり直しが効かない青春の一方通行感が繰り返し印象づけられるようになっていてせつない、だけどその短い一瞬(出会ってから2ヶ月足らずですよね!?)で駆け抜けていった狂児の存在をミナミ銀座や屋上で反芻するさとみくん、眩しすぎました

狂児が歌いやすいであろう曲リストを作ってきてくれたさとみくんが、説明しながら徐々に力入ってきて、お隣の席に寄ってきてくれるシーン、さとみくんを見つめる狂児の目線がたいへんでした

一方、さとみくんの視線でギャッッとなるのは、屋上でもう綺麗に歌えないって悩みを初めて(!)誰かに口にした時に「綺麗なもんしかあかんかったら、この街ごと全滅や」って喋ってる綾野狂児に向けたハニカミ顔が、もう本当に本当に本当にかわいかった
ちょっとモニョモニョしつつ徐々に顔が輝いていくの本当に良かった
そして狂児はその表情変化を見てないというのがもう
紅の日本語訳を見せるシーンも、カツ子で泣いてへんわ!の後わちゃわちゃシーンで泣きながら狂児をおずおず見上げる視線も、モニョモニョしながらの笑顔がすごいかわいいんですけど、全部狂児は見てないんだよなあ…あんなに近くにいるのに…

さとみくんが狂児の屋上での言葉に許されたあとの合唱祭、母に語る「それでもええかなって」で吹っ切れた感も良かった

あと下駄箱でバーカ、慌ててろ!と悪態ついてるさとみくんといい、和田くんの「毎日牛乳飲んでます〜〜〜」といい、中学生っぽさがほんとうにおぼこくて良かった
特にさとみくんに至っては、自分が練習に付き合わないことで大人の狂児に何かしら影響を与えられると思ってることが(言い方悪いですが)ガキくさくて非常に良かった

最後に、公式サイトのインタビューにあった合唱曲ついての話、

“「『影絵』は狂児と聡実の関係性も視野に置きながら象徴的な歌になったのではと思っています」”

「影が濃くなるのは、太陽が強烈なせいだよ
暗闇が深くなるのは、眩しい光のせいだよ
手放しながら睨みつける
笑いながら悲しんでいる
途方に暮れながら胸を張る
戸惑いながら覚悟している」

歌詞これ…めちゃくちゃ素晴らしい選曲です
制作陣本当にありがとうございました
カシ

カシ