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FALL/フォールのyのネタバレレビュー・内容・結末

FALL/フォール(2022年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

見応えはしっかりあったし、飽きることなく最後まで見れたし、伏線もかなりきっちり回収されていたけれど、観るのは一度でいいかな。


前半は主人公を不憫に思いながら見ていました。夫を失った悲しみや、高所への恐怖がものすごく伝わる。
けれど、タワーの頂上に辿り着く頃には「主人公も親友も夫も、命5個くらいあると思ってそう。生に対する前提がわたしとは違いすぎる」と、見る視点が感情移入の外側に移りました。
主人公はあんなに怖がっている割に、夫がいた頃も何度も崖上りをしているようだし。
安全が保証されていないうえに取り壊し予定の錆びた鉄塔を見ても「高いところが怖い」以外の危機感が感じられない。「倒れるかも」「不法侵入であとで怒られるかも」とか、あるじゃん…??

不倫の件はラストの親友の死体を利用するシーンのために作られた設定だな〜と思ったけれど、それを抜きにしても終盤の主人公の生命力の強さには笑いました。
怪我した脚をハゲワシにわざと襲わせて、首根っこをとっ捕まえて食べるし。生存のために、親友の死体を地上600m弱の高さから落とすし。靴が必要になるギリギリまで幻覚で生み出した親友に生存のアドバイスをさせるし。
終いには、生き残って地上に再び戻ったらパパに「もう大丈夫よ」とさえ言う始末。しかも家に帰る。家よりまず病院に行こう。脚も治療するべきだし、一旦精神科に行った方がいい。
というか、覚悟がキマッていたのはわかるが、救出後も親友の死に対してドライすぎる。すぐそこにあるよ?? ハンターちゃんの遺体。


…と色々言いたいことはあったけれど、わたしの中での評価が低く留まったのは、メッセージに説得力が無かったからかも。
親友が亡くなったところまでは親友の責任としても、不法侵入して救急隊を出動させ、蹴落とした親友の死体も処理させている主人公自身も見方を変えれば加害者というか、結構な迷惑行為だと思うのですが、そのあたりへのお咎めも反省もなく、ハンターの言葉を借りた「生を大切に!」がメッセージな本作。
過酷な経験など一度もなくとも命が大切で仕方ないわたしのような凡人には全然響かず…。窮地で必死で生き抜こうとしたことより、生を疎かにしてきたことへの反省をテーマにした方が、エンタメとして面白かったし、メッセージ性も高まったのではないかなぁ。

あとは、尋常じゃないくらいに手汗が出る映画なので、ハンドタオルを持って観るべきでした。
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