かなり悪いオヤジ

イコライザー THE FINALのかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
3.8
こんなお節介な殺し屋はいやだ。自分のタクシーに乗ったこいつはいい奴で、いい奴から金を盗んだから悪い奴と単純に決めつけるのはいかがなものだろうか。前回までは世捨て人同然のタクシードライバーだった男が、なぜかイタリアのシチリア島に突然現れて地元のマフィア相手に大暴れする。この無双オジサン=マッコール(デンゼル・ワシントン)、私刑宣告までの9秒ルールは今回もきっちり守っている几帳面ぶりだ。

しかし、マフィアのガキんちょにほんの少し気を許した途端、背後から撃たれ意識不明の重体に。小さなイタリアの漁村に住んでいた名医に助けられ一命をとりとめるマッコールは、リハビリ中村人の優しさにふれているうちに、「ここは俺の居場所だ」と勝手に思い込む。そして村を一大リゾートにしようと地上げをしかけるマフィアの皆さんをレストランで睨み付け....🩸

007のボンドやMIのイーサンのように何も世界中のリゾートシティをあっちこっち飛び回らなくとも、小さなイタリアの村だけを舞台にした本作は確かに斬新だ。なぜかナプキンを並べたテーブルでティーバッグの紅茶をすするマッコールには、“世捨人”を通り越した“仙人”のオーラさえ漂っている。そんなマッコールに何も知らないで喧嘩をふっかけたマフィアの兄ちゃんにも軽率といえばそれまでなのだが、いくら「タイミングが悪かった」からとはいえいきなり殺すことはないでしょう。平和に暮らしていた村人の皆さんもその無双ぶりに思わず縮みあがってしまったのではないだろうか。

しかしながら、あくまでもオレ流の正義を貫くマッコールの危なさは、アントン・フークアの狙いどおり、観客の目には実に新鮮に映るはず。訳もわからないまま、マッコールに頭をナタでかち割られ、目玉に銃口を突っ込まれ、腕を開放骨折させられるマフィアの皆さんには大変申し訳ないのだが、その理不尽さがたまらなく刺さるのである。「えっ、そんな理由でわざわざシチリアくんだりまでやって来たの?」マフィアならずとも思わず首をかしげたくなるメンヘラ気味の動機が癖になりそうな1本なのである。