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マチルダ・ザ・ミュージカルの都部のレビュー・感想・評価

3.1
『チャーリーとチョコレート工場の秘密』の原作者であるロアルド・ダールの原作及びミュージカルを土台としてNetflixにより制作された本作は、色彩豊かな画面構築と少女少年達による見応えのあるミュージカルを魅力としているが、戯画化により却って大衆向けにそぐわない毒味が増した印象を受ける。

作中でも特に顕著である大人からの子供への理不尽な振る舞いが散見され、それが適切に消化されない筋書きはやはり無条件に肯定し難いものがある。

大人が子供に理不尽を強いる展開は別段問題ではないと思う──というのも私は『子供』や『老人』や『ペット』がプロットガードされる展開を唾棄しているというのもあるのだが、この場合はヘイトコントロールの匙加減の不得手さが、釈然としない作品の後味として尾を引いている。

本作は無理解な大人をマチルダを初めとする子供達が対立する存在として立てているので、マチルダの両親の過去は原作からオミットされており、特定の大人を除くと対話不可能で理解の及ぶ存在として『大人』が描かれることはない。その分かりやすい手段としての理不尽が振るわれる訳だが、その一つ一つの絵面の強烈さは良くも悪くもで、これに対して大人への意趣返しは明確に物足りないのである。

これではとても溜飲が下がらない。
そんな気分にさせられる。

一見して見事な布石回収のように思えるマチルダの作り話の真相は物語のテーマ性の結実にはさして無関係に処理され、また彼女の持つ才能も局所的な扱いが成されるため、脚本の不便に都合の良いそれとしての場面が多いのは気になった。それが発露するのは後半からというのを加味しても、それは結末に大きく関与するものとして扱うにはどう考えても足早さは拭えないし、少女少年が成し遂げる革命に対する達成感に水を差すような存在であるように思えた。

ミュージカルパートはそこそこの出来で特別印象に残るのは革命を巡る1曲のみだが、ミュージカルではなくミュージカル映画であることを活かしたミュージカルシーンの画の変化は良し。総合的に不服が多く残る作品だが、軽く見るにはちょうど良いくらいのウェイトの作品かもしれない。
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