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四月のotomisanのレビュー・感想・評価

四月(1962年製作の映画)
4.0
 家具を抱えて右往左往する男たち。この一発でイラっとこないで発禁処分にしないなら、なんの検閲か?

 増産に次ぐ増産で滞貨となった家具が倉庫代わりに社員の住居で保管されるのか、出荷命令を受けて対価なしの輸送に走り回るのか、黙ってられては知る由もない。まさか現物支給とか強制購入の現実を見せられているのか?しかし、男だらけ。まあ、党中央の御意思を問うてはいけないから。
 スターリンの死後10年、今じゃこんなのおちゃらけ程度というなら、官民馴れ合いの相手で48分とはずいぶん暇を見透かされたもんだ。

 そんな事はお構いなしなのが恋愛中の二人?あの丘にはまだ家具になってない木があるんだ、不思議だねなんてね。「現実」をぶん投げていい気なもんだ。
 すると、増産中は建物も同じ。建っちゃったんだから住めよというわけだ。真っ先に財物を生産しないおかげで身軽でいられるゲージツカが送り込まれて、じきに「有産階級」か家具の付属品か分からなくなった男どもが送り込まれる。まったく、この分ならどこかに女だらけの街があって男日照りに見舞われているのだろう。
 そこにひとり、民情偵察員のような怪しいのが椅子一脚を持って、それを何の証しとする気か、交換でも企むのか恋愛階級のもとを訪れて何か言ってるが、すでにこれまでの会話がみな暗号語らしく、この解明には監督をしばらく泳がせて関係先等を洗うのがよいと判断されたに違いない。

 党中央の統制のもと勝手に点いては消えるガスコンロや水道、家具の付属品化し管理徹底で施錠厳重の二乗を達成する元恋愛階級。これぞ社会主義の実像として、命令と生産活動、人民防衛に完全に従属した人民の生存上の無駄を排除した先のノルマ達成ちょっと過剰状態を見事に活写していてほんとにいいのか?

 いいかどうかはさておき、共産党のもとでは腹もへらないはずの人民が恋愛階級時代の記憶をあのスラム街の絵一枚でよみがえらせたかのようにはげ山の丘でまたお互いを再確認でもするらしい。それとも家電製品の現物支給は間違いだったのか?暗号解明ののちそれが修正主義的か否か問い直されるであろうが、切り株の上でなにごとを言い交わそうと4月はウソが旬だと思えば当局の関知するところではない。
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